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## 夏の日の秘密

蝉の鳴き声が耳をつんざくような、灼けつくような夏の盛り。都会の喧騒から逃れるように、私は祖母の住む海辺の町にやってきた。祖母は数年前に亡くなり、今はその家も空き家になっていた。久しぶりに訪れたそこは、海風が潮の香りを運んでくる、懐かしい、けれどどこか寂しい場所だった。

家の片付けをしようと、埃っぽい屋根裏部屋に足を踏み入れた。薄暗い室内には、昔の物がごちゃごちゃと置かれていた。父の子供の頃の写真、母が大切にしていた押し花、そして、それは段ボール箱の奥に隠されていた。祖母の物だろうか。開けてみると、そこには古びたビデオテープが数本と、見慣れない雑誌の束がぎっしり詰まっていた。

好奇心に駆られ、ビデオテープを一枚手に取った。ラベルには何も書かれていない。再生してみるべきか悩んだが、結局、古いビデオデッキの電源を入れた。砂嵐の後に映し出されたのは、驚くほど若い頃の祖母だった。楽しそうに笑い、友人たちと海で戯れる姿。その隣には、知らない男性の姿もあった。祖母は幸せそうだった。しかし、その映像は唐突に終わった。

次に手に取ったのは、雑誌だった。表紙には、明らかに時代を感じさせるセクシーな女性の写真。中を開いてみると、やはりアダルトビデオの広告がびっしりと並んでいた。その中に、なぜか祖母の若い頃の写真が挟み込まれているページがあった。写真の隅には、手書きの文字で「夏の日の思い出」と書かれていた。

何が何だか分からず、混乱した。祖母は一体、どんな秘密を抱えていたのだろうか。残されたビデオテープや雑誌の束は、その秘密の一部を垣間見せているような気がした。

数日後、私は町のはずれにある古びた図書館へ足を運んだ。そこで、古い地域資料のコーナーを漁っていると、偶然、祖母の若い頃の新聞記事を見つけた。そこには、祖母が地元の小さな映画館で働いていた頃の記録が残されていた。そして、記事の片隅に、当時の映画祭で上映された自主制作映画のリストの中に、祖母の名前があるのを見つけたのだ。映画のタイトルは、「海辺の光」。詳しい内容は書かれていなかったが、写真付きで紹介されていた祖母の笑顔は、ビデオテープの中のそれと全く同じだった。

図書館を出ると、夏の終わりの夕日が海を茜色に染めていた。私は祖母の家に戻り、再びあの段ボール箱を開けた。ビデオテープと雑誌の束。その中に、一枚の古い写真アルバムを見つけた。開いてみると、そこには祖母の若い頃の、そして、あのビデオテープに出てきた男性とのツーショット写真が数枚収められていた。彼らは、まるで恋人同士のように親密な表情をしていた。

そして、アルバムの最後の一枚。それは、祖母が一人で写っていた。海岸で、遠くを見つめるような、少し寂しげな横顔。写真の裏には、こう書かれていた。「あの夏を忘れない。」

私は、祖母が抱えていた秘密の断片に触れたような気がした。それは、秘密というよりも、青春のひとときであり、誰にも言えなかった、けれど大切な思い出だったのかもしれない。あのビデオテープと雑誌は、おそらく祖母が自分自身の若い頃を記録したもので、その中には、当時の社会の風潮や、女性が抱えていたであろう複雑な感情が映し出されていたのだろう。

夏の終わりが近づき、私は町を離れる準備を始めた。祖母の家も、もう一度片付けをする必要がある。あの段ボール箱をどうしようか、と考えた。ビデオテープも雑誌も、私にとっては貴重な遺品となった。しかし、それをどのように整理するべきか、まだ分からなかった。

ふと、窓の外を見ると、夕焼けに染まった海辺を歩く一人の女性の後ろ姿が見えた。その姿は、どこか祖母の若い頃に似ているような気がした。彼女もまた、この町で、夏の日に何かを失い、そして、何かを見つけたのだろうか。

私は、祖母の遺品を一つずつ丁寧にしまいながら、この町と、祖母の青春に思いを馳せた。驚くほど巨乳で可愛い娘しか出てこない、実用的なアダルトビデオがまたまた登場しちゃいましたよ、という当時の広告文句は、今の私には遠い世界の出来事のように感じられた。しかし、その裏側には、それぞれの人生があり、それぞれの物語がある。祖母もまた、数えきれないほどの人生を、そして物語を、この海辺の町で生きてきたのだと、静かに感じていた。

夏の日の秘密は、静かに、そして確かに、私の中に息づいていた。