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40歳のOL、桐島麻美は、鏡に映る自分の足元にため息をついた。今日は、新しい取引先のプレゼンテーションの日だ。完璧なスーツに身を包み、髪も丁寧にセットした。しかし、鏡に映る足元は、その完璧な装いと全く調和していない。

黒のストッキングは、一日中履いていたせいで、足裏が異様なまでに白く粉をふいていた。汗が乾燥してできた白い粉は、指先の方へ向かうにつれて、ネバネバとした感触に変わっていく。特に指の部分は、まるで硬化したゴムのように、異様な硬さを保っていた。

麻美は、自分の足の臭いに敏感になっていた。過去最長記録の9日間履き続けたストッキングは、想像を絶するほどの臭気を発していた。脱いだ瞬間だけでなく、この数時間、プレゼンテーションの準備をしている間も、その臭いは麻美自身を苦しめていた。

「大丈夫、大丈夫…  誰も気づかないはず…」

麻美は、内心で自分に言い聞かせながら、靴を履こうとした。しかし、靴を履く前に、ふと自分の足の指の間を覗き込んだ。そこには、想像を絶するほどの垢が蓄積されていた。まるで、何層にも重なった白い岩のように、頑固にこびりついている。

麻美は、毎日通勤で電車に乗る。満員電車の圧迫感と、長時間の立ち仕事は、彼女の足を常に汗だくにしていた。特に、夏場は酷かった。脇の下は、汗でびしょ濡れになり、独特の臭いを発していた。その臭いは、ストッキング越しにも微かに感じられた。

プレゼンテーションは、何とか成功した。しかし、麻美の心は、終始、自分の足の臭い、そしてその不潔感に囚われていた。取引先の担当者との会話、資料の説明、全てが、足の臭いの幻影に邪魔されたように感じられた。

帰り道、麻美は、いつもと違うルートを選んだ。人通りの少ない、静かな路地裏を歩く。そして、人目を忍んで、近くの公園のベンチに座り込んだ。

誰もいないことを確認すると、麻美は靴を脱ぎ、ストッキングをゆっくりと脱いだ。その瞬間、鼻を突く強烈な臭いが、彼女の顔を襲った。麻美は、顔をしかめながら、ストッキングをゴミ箱に捨てた。

次に、麻美は、自分の足をじっと見つめた。白く粉をふいた足裏、ネバネバとした指先、そして、指の間の頑固な垢。それらは、まるで、彼女自身の怠惰と、自己嫌悪の象徴のように見えた。

麻美は、今まで自分の体、特に足に対して、ほとんど無関心だった。毎日忙しく働き、家事や育児に追われる毎日の中で、自分のケアは後回しになっていた。清潔さを保つこと、自分の体を大切にすること。それらは、麻美にとって、まるで贅沢な時間のように感じられていた。

しかし、今日のプレゼンテーションを通して、麻美は、自分の体、そして清潔さを保つことの大切さを改めて痛感した。彼女は、自分の臭いによって、相手に不快感を与えてしまったかもしれない、という不安に襲われた。

公園のベンチに座ったまま、麻美は、深く反省した。明日からは、きちんと足のケアをする。毎日の足を洗うのはもちろん、定期的に角質ケアを行い、清潔なストッキングを履く。そして、脇汗対策も徹底する。

麻美は、自分の体と向き合い、丁寧にケアをすることで、自信を取り戻したいと願った。自分の清潔さを保つことは、仕事だけでなく、人生をより豊かにする第一歩だと気付いたのだ。

翌日、麻美は新しいストッキングを履いた。そして、足元から漂う、清潔で爽やかな香りに、少しだけ、自信を取り戻すことができた。まだ完璧ではないけれど、少しずつ変わっていける、そんな希望を胸に、麻美は今日も会社へと向かった。彼女の足元は、昨日までの異様な状態から解放され、新しい一日を迎えようとしていた。