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## 札束と友情、そして秘めたる欲望

「いやー、それにしても、最近の若い奴らは草食系ばっかりでな。俺たちの頃は、もっとこう、ギラギラしてたもんだけど。」

古びた喫茶店の片隅で、ビールジョッキを片手に、加藤が溜息を吐いた。向かいには、同じく五十路を過ぎたばかりの田中が、無精髭を撫でながら相槌を打つ。

「そうそう。プラトニックな友情なんて、今じゃ幻想だよ。誰だって、心の奥底では何かを期待してるんじゃないか？ 特に、異性となると。」

加藤はニヤリと笑った。二人は、長年の友人であり、同時に、世の中のあらゆる「タブー」に好奇心を抱く、いわば「実験好き」なオジサンたちだった。今回のテーマは、ずばり「男女の友情は、札束次第でどうにでもなるのか？」。そして、その裏に潜む、草食系男子が横行する現代において、本当に「プラトニックな関係」は存在するのか、という疑問への探求だった。

「だからさ、今回はちょっと、大胆な実験をしてみようかと。」

田中が、テーブルの下から分厚い封筒を取り出した。中には、札束がぎっしりと詰まっている。

「こいつは、今回の実験のための「検証用資金」だ。ターゲットは、俺たちの共通の知人でもある、大学生のカップル、健太と沙織。」

健太は、物静かで読書好き、いかにも「草食系」といった風貌の青年だった。一方の沙織は、明るく活発で、社交的な女性だった。二人の間には、周囲から見ても、揺るぎない友情と愛情が芽生えているように見えた。

「健太は、沙織にずっと片思いしてたらしいんだが、勇気が出ずに友達のままなんだと。沙織も、健太のことを「親友」として大切にしてる。だが、俺たちオジサンから見ると、その「親友」ってのが、いつ「そうじゃない関係」に発展してもおかしくない、微妙なラインなんだよな。」

加藤は、これまでの人生経験を元に、男女の友情には常に「性」という要素が影を潜めていると確信していた。そして、その「影」を、札束という「光」で照らし出し、どこまで本質を暴けるのか。それが、今回の実験の目的だった。

実験は、細心の注意を払って計画された。まず、加藤が沙織に接近し、彼女の抱える経済的な悩みをさりげなく聞き出した。沙織は、大学の学費や、趣味の音楽活動に使う機材の購入費などで、決して余裕のある生活を送っているわけではなかった。

「沙織ちゃん、最近、何か困ってることとかない？ この前、話してた機材、結構高いんでしょ？」

加藤は、まるで心配する年上の友人であるかのように、親身になって話を聞いた。沙織は、最初は戸惑いながらも、徐々に本音を漏らし始めた。

「実は… あの機材、やっぱりどうしても手に入れたくて。でも、バイト代だけじゃ、なかなか貯まらなくて…」

「なるほどね。もし、沙織ちゃんがどうしてもその機材が欲しいなら、俺がちょっと、手助けしてあげてもいいけど。まあ、お礼とかは別にいらないから、気軽に言ってくれ。」

加藤は、ここで「検証用資金」の一部を、沙織に「プレゼント」として渡した。その金額は、彼女が欲しがっていた機材の購入費を、少し上回る額だった。沙織は、驚きと感謝の表情で、加藤に深々と頭を下げた。

「加藤さん、本当にありがとうございます！ こんなにたくさん…！ 何かお礼させてください！」

「いやいや、そんな必要はないよ。ただ、俺も音楽は好きだから、沙織ちゃんの活躍を応援してるだけだよ。」

加藤は、あくまで「親切な友人」を演じ続けた。沙織は、その優しさに感動し、加藤への信頼感を深めていった。

一方、田中は健太に接触した。

「健太、最近どうだ？ 沙織とは相変わらず仲良くやってるか？」

「はい、田中さん。沙織とは、昔からの親友ですから。」

健太は、沙織への想いを秘めつつも、その「親友」という言葉に、どこか寂しさも滲ませていた。

「そうか。まあ、男友達とは違う、特別な友情ってやつだよな。でもさ、健太。もし、沙織が他の男に、こういう風に優しくされて、何か感じたらどう思う？」

田中は、健太の心の奥底に眠る、嫉妬や独占欲を刺激しようとした。そして、ここでも「検証用資金」が登場する。

「これは、健太のお小遣いにでもしといてくれ。まあ、親友の沙織のためにも、元気でいてもらわないと困るしな。」

田中は、健太にも「検証用資金」を渡した。健太は、加藤から沙織に渡された「プレゼント」の存在を、田中から示唆されていたこともあり、複雑な表情を浮かべた。

数日後、加藤は沙織を誘い出した。今度は、もう少し「個人的」な場所へ。夜景の見えるレストランで、加藤は沙織に、さらに高価なプレゼントを渡した。それは、彼女が長年憧れていたブランドのバッグだった。

「沙織ちゃん、これは、俺からのささやかなプレゼントだよ。君の才能と、これからの活躍を応援したいんだ。」

沙織は、そのあまりの豪華さに、息を呑んだ。彼女は、健太との関係はあくまで「プラトニック」だと信じていた。しかし、加藤からの度重なる「優しさ」と「金銭的な援助」は、彼女の心に、微かな「期待」という名の感情を芽生えさせていた。

「加藤さん…私、本当に、加藤さんには感謝してもしきれません。でも、健太も、私のことを…」

沙織は、健太への想いと、加藤への感謝の念の間で揺れていた。

その夜、健太は、沙織と加藤が一緒にいるところを、偶然目撃した。レストランから出てくる二人。加藤は、沙織の肩に手を回し、親密な雰囲気で話をしている。健太の胸に、熱いものが込み上げてきた。

「沙織…」

健太は、思わず沙織の名前を呼んだ。沙織は、健太の姿に気づき、驚いた表情で振り返った。加藤も、健太の存在に気づき、ニヤリと笑った。

「おや、健太じゃないか。どうした、こんなところで。」

健太は、言葉を失った。沙織は、加藤と健太の間で、どうしていいか分からず、ただ立ち尽くしていた。

その夜、健太は、沙織に電話をした。

「沙織…今、どこにいるんだ？」

「健太…ごめん、今、加藤さんと一緒にいるの。」

「加藤さんと…？ 何してるんだ？」

健太の声は、震えていた。沙織は、加藤からの「優しさ」と、健太への「親友」という関係性に、これまで感じたことのない葛藤を抱えていた。

「あのね、健太…加藤さんが、私に、すごく、すごくたくさん、助けてくれたの。」

「助けてくれた？ 俺には、そういうこと、言ってくれなかったじゃないか！」

健太の怒りが、爆発した。沙織は、涙声で言った。

「だって、健太も、私にそういうこと、言ってくれなかったから…」

二人の間に、言葉にならない想いが交錯した。

翌日、加藤と田中は、いつもの喫茶店にいた。

「いやー、面白かったな、今回の実験。」

田中が、満足そうにビールを呷った。

「結果は、どうだったと思う？」

加藤が、ニヤニヤしながら尋ねた。

「うーん、そうだな。沙織ちゃんの心は、札束によって、かなり揺れただろうな。健太も、嫉妬と独占欲に駆られて、行動を起こした。結局、男女の友情なんて、そんなに純粋なものじゃないってことだよ。」

「ふっ、そりゃそうだろうさ。俺たちの時代は、もっとストレートだったけどな。でも、結局、形を変えて、今でもそういう「欲望」は、みんな心の奥底に抱えてるんだよ。」

加藤は、テーブルの上の札束を指差した。

「この札束は、確かに二人の関係に「変化」をもたらした。沙織は、加藤からの「優しさ」に、健太は、沙織の「変化」に、そして自分自身の「隠された感情」に気づかされた。プラトニックな友情なんて、幻想だったのか？ いや、むしろ、その「幻想」を維持するために、無意識のうちに「理性」が働いていただけで、いざ「欲望」という名の「誘惑」が目の前に現れたら、誰だって揺らぐんだよ。」

「つまり、男は金で、女は男で、友情を壊せるってことか？」

「いや、そう単純じゃない。今回の場合、健太も沙織も、お互いを大切に思ってた。だからこそ、この「実験」が、二人の関係に、ある意味「試練」を与えたわけだ。この試練を乗り越えて、二人の関係がどうなるのか、それはまた別の話だ。」

加藤は、コーヒーカップをゆっくりと傾けた。

「草食系男子が横行する時代だからこそ、こういう「秘めたる欲望」とか、「隠された本能」みたいなものが、逆に浮き彫りになるんだ。俺たちオジサンは、そういう人間の「生」の部分を、これからも探求し続けるさ。だって、それが、一番面白いじゃないか。」

加藤と田中は、互いの顔を見て、満足げに頷いた。彼らにとって、この「エロいリアルモニタリング実験」は、単なる好奇心を満たすためだけではない。それは、現代社会に潜む、人間の欲望や本能、そして友情という名の「幻想」を、剥き出しにして見つめ直すための、壮絶な「遊戯」だったのだ。そして、その遊戯の先に、彼らが求める「真実」が、少しでも見え隠れすることを、彼らは信じていた。