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この小説はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。また、性的な描写や暴力的な表現が含まれていますので、ご注意ください。

潮風が頬を撫でる。勝どき駅から月島方面へと続く道は、夕暮れ時ともなると、下町情緒と高層マンション群の織りなす独特の雰囲気に包まれる。そんな街並みを、私は少し緊張した面持ちで歩いていた。

かつて、私は「伝説のナンパ師」と呼ばれていた。もっとも、それはもう十数年も前の話だ。若さという武器を失った今、再びこの世界に足を踏み入れることになるとは、想像もしていなかった。

きっかけは、旧友からの連絡だった。「お前しかいないんだ」と、彼は切羽詰まった声で言った。熟女専門の映像制作会社を経営している彼は、ある企画に行き詰まっていた。

「ガチでナンパして、顔出しさせて、さらに…」

彼の企画を聞いた時、私は一瞬、眉をひそめた。しかし、彼の真剣な眼差しと、この企画にかける情熱に、私は心を動かされた。

「わかった。やってみよう」

そう答えたものの、正直、不安は大きかった。今の私に、あの頃のような輝きは残っているのだろうか。そもそも、熟女は私のような男に興味を持ってくれるのだろうか。

勝どきの高層マンション群を背に、私は深呼吸をした。覚悟を決めて、人通りの多い道へと足を踏み出した。

最初のターゲットは、スーパーマーケットから出てきた、エプロン姿の女性だった。年齢は50代後半くらいだろうか。どこか寂しげな表情をしていた。

「あの…すみません」

声をかけると、女性は驚いたように私を見た。

「何かご用ですか？」

「もしよろしければ、少しお話しませんか？ あなたの笑顔が素敵だなと思って」

昔取った杵柄か、言葉はスムーズに出てきた。女性は少し戸惑っていたが、私の真剣な眼差しに、警戒心を解いたようだった。

「少しだけなら…」

近くのカフェに入り、私たちは他愛のない話をした。女性の名前は美代子さん。夫は数年前に亡くなり、今は一人暮らしをしているという。

「毎日、同じことの繰り返しで…何か刺激が欲しいと思っていたんです」

美代子さんの言葉に、私は胸が締め付けられた。彼女のような女性こそ、私の企画に必要なのではないか。

「美代子さん。もしよろしければ、私の仕事を手伝ってもらえませんか？」

私は、正直に自分の仕事について話した。もちろん、企画の核心部分は伏せて。

美代子さんは、私の話に興味津々の様子だった。

「面白そうね。でも、私に何ができるのかしら？」

「あなたの笑顔が必要です。あなたの魅力が必要です」

その日のナンパは、美代子さんと連絡先を交換することで終わった。

翌日、私は美代子さんと再会し、改めて企画の詳細を説明した。彼女は、少し考え込んだ後、こう言った。

「一度、やってみようかしら」

美代子さんの決意に、私は心から感謝した。

それから数日間、私たちは二人三脚で企画を進めた。美代子さんは、最初は戸惑っていたものの、次第に楽しんでいるようだった。彼女の笑顔は、日に日に輝きを増していった。

撮影当日。美代子さんは、少し緊張した面持ちだった。私は、彼女の手を握り、励ました。

「大丈夫。あなたは絶対にできる」

撮影は、順調に進んだ。美代子さんは、カメラの前で、ありのままの自分をさらけ出した。彼女の表情、言葉、仕草…すべてが、観る者の心を揺さぶる力を持っていた。

撮影が終わり、私たちは二人で近くの居酒屋に行った。美代子さんは、ビールを飲みながら、しみじみと語った。

「あの時、あなたが声をかけてくれなかったら…私は、ずっと孤独だったかもしれません」

私は、美代子さんの言葉に、胸が熱くなった。

「私こそ、美代子さんに感謝しています。あなたのおかげで、私は再び輝きを取り戻すことができました」

その夜、私たちは、互いの肩を抱き合い、朝まで語り合った。

数週間後、映像が公開された。結果は、予想をはるかに超える大反響だった。美代子さんは、一躍、時の人となった。

私は、美代子さんに感謝の言葉を伝えた。

「あなたのおかげで、私の人生は大きく変わりました」

美代子さんは、微笑んだ。

「私もよ。あなたに出会えて、本当に良かった」

私は、美代子さんの笑顔を見ながら、確信した。

あの時、あの場所で、彼女に声をかけたのは、偶然ではなかったのだと。それは、必然だったのだと。

そして、私は、再びナンパの世界に戻ることを決意した。今度は、誰かの人生を輝かせるために。誰かの孤独を癒すために。

潮風が、再び私の頬を撫でる。私は、新たな決意を胸に、勝どき・月島の街へと歩き出した。

完