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朝の光が、まだ眠たげなタケルの頬を撫でた。17歳。ふっくらとした唇と、くりくりの瞳が可愛らしい少年は、今日もいつものように、奇妙な悩みに苛まれていた。それは、彼自身の身体が、制御不能なほどに「発情」してしまうことだった。場所を選ばず、誰にも止められない、どうしようもない衝動。

バスの中でも、トイレの中でも、それは襲いかかってくる。バスの揺れが、トイレの閉鎖空間が、彼の身体を敏感に反応させるトリガーとなってしまうのだ。バスでは、窓から差し込む僅かな光と、車内の微かな揺れが、彼の肌を熱くする。身体の内側から湧き上がる熱は、汗ばんだ肌に沿って流れ、まるで水滴のように、滴り落ちる感覚を彼にもたらす。

トイレでは、その状況はさらに深刻だった。冷たいタイルの感触、人工的な照明の光、そして静寂。それらが、彼の敏感な神経を刺激し、抑えきれない高揚感を誘う。ローションの滑らかな感触が、さらにその高揚感を増幅させる。彼は、いつもトイレの小さな個室で、一人、震えながら、その衝動に身を任せ、そして、精液を零してしまう。

しかし、そんな行為の後に残るものは、罪悪感と空虚感だけだった。誰にも相談できない、誰にも理解してもらえない、この秘密を彼は一人抱え込んで生きていた。友達からは、可愛らしい容姿と穏やかな性格から「天使みたい」と言われることもあった。そんな彼らに、自分の抱えるこの異常な性癖を打ち明けることなど、到底考えられなかった。

ある日、学校帰りのバスの中で、いつものように彼の身体は熱を帯び始めた。窓から見える夕焼けのオレンジ色が、彼の視界を歪ませる。心臓の高鳴りが、バスのエンジンの音と混ざり合い、耳を塞ぐように響いた。汗ばんだ掌で、握っていた手摺りを強く掴む。身体の奥底から沸き上がる衝動は、もはや限界に達しようとしていた。

我慢の限界を超えた彼は、バスの揺れに身を任せるようにして、目を閉じた。身体が震え、意識が朦朧としてくる。微かに聞こえるバスのアナウンス、座席の軋む音、すべてが彼の感覚を研ぎ澄まし、高揚感をさらに増幅させた。彼の呼吸は荒くなり、肌は赤みを帯び、身体中から熱が噴き出すように感じられた。

ついに、彼は堪えきれなくなった。バスの座席に身を委ね、静かに、そして激しく、その衝動を解き放った。周囲の乗客は、彼の異変に気づいていないように見えた。それとも、気づいていても、何も言わないのだろうか。彼は、そのことに安堵と同時に、深い悲しみを感じた。

バスを降りた後、彼は近くの公園のベンチに腰掛け、しばらくの間、息を整えていた。身体の熱は冷め、精根尽き果てたような疲労感が彼を襲った。しかし、同時に、これまで経験したことのないような、深い充足感も感じていた。それは、禁断の行為に対する罪悪感と、解放感の奇妙な混ざり合った感情だった。

その夜、彼はいつものようにベッドに横たわった。今日の出来事、バスの中で感じたいつもの衝動、そして、その衝動を解き放った後の虚無感と解放感。それらを反芻しながら、彼はゆっくりと目を閉じた。明日もまた、同じようにバスに乗り、同じような衝動に襲われるのだろうか。その不安と、同時に、明日もまた、この秘密を一人で抱えながら生きていかなければならないという現実が、彼を重苦しくさせた。

しかし、彼の心の中に、かすかな希望の光が灯り始めた。それは、誰にも理解されないかもしれない、この苦しみを誰かに打ち明けたいという、小さな願望だった。それは、まだ、はっきりと形にはなっていない、未来へのかすかな兆しだった。彼が、この秘密を抱えながら、それでも明日を生きていくための、僅かな希望の光だった。

彼は、自分のこの性癖を受け入れ、いつか、誰かに打ち明けることができる日が来ることを、心の中で願った。そして、その日まで、彼は一人、この秘密を抱えながら、静かに、そして強く、生きていく決意をした。彼の気持ちよさそうな顔は、ベッドの中で、静かに眠りについた。それは、希望と不安が複雑に絡み合った、複雑な表情だった。