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## 禁断のフェザータッチ

現代社会は、かつてないほどの多様性の中にいる。食の好み、ファッション、さらには性的な嗜好に至るまで、人々はそれぞれの「好き」を追求し、肯定する時代だ。そんな流れの中で、ある興味深い変化が静かに、しかし確実に広まっていた。それは、男性側の「クンニ嫌い」の増加と、それに呼応するかのような女性側の「クンニをしてほしい」という願望の急増である。

この変化にいち早く目をつけ、社会現象とも言えるブームを巻き起こしたのが、リラクゼーションエステ「フェザータッチ」だった。女性誌の片隅に掲載された小さな広告は、瞬く間に反響を呼び、現在では一ヶ月先まで予約が取れないほどの人気を博していた。

「フェザータッチ」が提供するのは、文字通り「羽根のようなタッチ」で、女性のデリケートな部分を優しく、しかし官能的に刺激し続けるという、極めて特殊な施術だった。その核心は、長時間にわたるクンニという、ある種タブー視されがちな行為を、あくまで「リラクゼーション」という名目の元に提供することにあった。

都会の片隅、喧騒から少し離れた静かな一角に、「フェザータッチ」はひっそりと佇んでいた。ガラス張りのドアの向こうには、暖色系の照明に包まれた落ち着いた空間が広がり、心地よいアロマの香りが鼻腔をくすぐる。店内は、淡いピンクを基調とした内装で統一され、柔らかなソファや間接照明が、訪れる女性たちを優しく包み込む。

この日、予約を入れることができたのは、都内に住む30代の会社員、早川沙織だった。彼女は、最近の社会的な風潮に敏感に反応し、この「フェザータッチ」に強い興味を抱いていた。友人から「すごく気持ちいいらしいよ」と聞いて以来、ずっと気になっていたのだ。

受付を済ませると、優しそうな女性スタッフに案内され、薄暗い個室に通された。部屋の中央には、ふかふかのベッドが置かれ、その上には真っ白なシーツが敷かれている。壁には、抽象的な絵画が飾られ、耳を澄ませば、かすかに心地よい音楽が流れている。

「本日は、フェザータッチの施術をご希望ですね。担当は、佐藤になります。」

そう言って入ってきたのは、すらりとした体格の、優しそうな笑顔をたたえた男性施術師だった。佐藤は、白衣を身にまとい、清潔感あふれる印象を与える。

「こんにちは、佐藤です。どうぞ、リラックスしてください。」

沙織は、少し緊張しながらも、佐藤の穏やかな声に促され、ベッドに横たわった。佐藤は、沙織の体調や希望する施術の強さを丁寧に聞き取り、施術の準備を始めた。

「本日は、基本コースでよろしいでしょうか？　基本コースでは、約30分間、お客様のお好みに合わせて、デリケートな部分を優しく刺激させていただきます。なお、本番行為は一切禁止となっておりますので、その点だけご了承ください。」

沙織は、緊張と期待が入り混じった表情で頷いた。彼女にとって、このような施術を受けるのは初めてのことだった。

佐藤は、まず沙織の体に温かいタオルをかけ、リラックスを促した。そして、指先から伝わる微かな熱を感じさせるように、ゆっくりと、しかし的確なタッチで施術を開始した。

「ふぅ…。」

沙織は、思わず安堵のため息を漏らした。佐藤の指先は、想像以上に繊細で、まるで羽根が触れているかのような感覚だった。それは、これまでに経験したことのない、優しくも官能的な刺激だった。

施術が進むにつれて、沙織の体は次第に熱を帯びていく。佐藤の指先は、彼女の身体の最も敏感な部分を的確に捉え、心地よいリズムで刺激し続けた。それは、単なる快感だけではなかった。長年、日々の仕事や人間関係に追われ、忘れかけていた、女性としての自分自身が、ゆっくりと呼び覚まされていくような感覚だった。

「ん…っ。」

沙織の口から、微かな吐息が漏れた。佐藤は、そんな沙織の反応を察するように、さらに繊細なタッチを加え、施術の深度を深めていく。

「大丈夫ですか？　もう少し強くしましょうか？」

佐藤の声が、耳元で優しく響く。沙織は、言葉にならない声で応えた。

「…っ、はい…。」

佐藤の指先が、さらに大胆に、そして巧みに沙織の身体を撫でていく。それは、まるで熟練の彫刻家が、無垢な大理石に命を吹き込むかのような繊細さだった。沙織の身体は、佐藤の指先一つ一つに呼応し、激しい熱を帯びていく。

「あ…っ、そこ…っ！」

沙織の喘ぎ声が、個室に響き渡った。彼女は、本番禁止というルールを頭では理解していた。しかし、佐藤の圧倒的なテクニックと、自身の身体に生じる抗えない高揚感に、抗うことは難しくなっていた。

「佐藤さん…っ、もっと…っ。」

沙織の言葉は、もはや理性ではなく、本能の叫びだった。佐藤は、沙織の言葉に静かに頷き、さらに深い、より官能的な施術へと移行していった。

「…っ、だめ…っ…でも…っ。」

沙織の理性は、もはや限界を迎えていた。身体は、佐藤の指先を求めて、自然と彼の方へと傾いていく。そして、それは、彼女自身が望むことでもあった。

「…っ、佐藤さん…っ、お願い…っ。」

沙織の瞳は、熱に浮かされたように潤み、恳願するように佐藤を見つめていた。佐藤は、沙織の様子を静かに見つめ、そして、かすかに微笑んだ。

「…承知いたしました。」

彼がそう答えた瞬間、沙織の体は、喜びと興奮で震えた。禁断の施術は、彼女の理性と本能の狭間で、さらに深い領域へと進んでいく。

「フェザータッチ」の個室では、このような光景が、日々繰り広げられていた。女性誌で報じられる「禁断の施術風景」は、単なるセンセーショナリズムではなく、現代社会の隠された欲望と、それに応えようとするサービス提供者たちの複雑な関係性を映し出していた。

沙織は、施術が終わった後、ふらふらとした足取りで店を出た。身体には、心地よい疲労感と、満たされたような感覚が残っていた。彼女は、この「フェザータッチ」が、単なるエステティックサロンではないことを、身をもって体験していた。それは、女性たちの秘められた願望を解き放ち、普段は抑えつけられている自己を肯定するための、禁断の場所なのだと。

都会の喧騒に戻っても、沙織の心には、あの羽根のようなタッチが鮮やかに残っていた。そして、彼女は、またすぐにでも、あの場所へ戻りたいという衝動に駆られていた。現代社会における「クンニ嫌い」の男性と、「クンニをしてほしい」女性という、一見矛盾するような願望の共存。その奇妙なバランスの上に、「フェザータッチ」という名の、禁断の楽園は、これからも彼女たちの欲望を満たし続けていくのだろう。