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## 禁断の蜜壷、最後の熱

過ぎ去った夏は、まるで鮮やかな絵の具のように私の記憶に焼き付いていた。あの灼熱の陽光、肌を焦がすような熱風、そして、あなたとの出会い。あれから季節は巡り、冷たい秋風が窓を叩いている。けれど、私の身体にはまだ、あの夏の残滓が熱く、そして罪深く宿っている。

「お願い、やめないで…」

あの夜、あなたが私の耳元で囁いた言葉。潤んだ瞳で私を見つめ、絡ませてきた身体。その全てが、今も鮮明に蘇ってくる。それは、許されない愛。禁断の果実。しかし、一度手にしてしまった甘美な毒は、私の心を、そして身体を、激しく揺さぶった。

夫である健一は、善良で真面目な男だ。私たちの結婚生活は、平穏で、穏やかで、そしてどこか色褪せていた。退屈な日常、当たり前になった愛情、まるで飾られた人形のように生きていく私。そこに、あなたは嵐のように現れた。

あなたは、大学時代の友人であり、今は海外で活躍するフォトグラファーだった。久しぶりに再会したあなたは、あの頃よりもずっと洗練され、艶やかな魅力を放っていた。あなたの瞳は、私の心の奥底に眠っていた何かを、見透かしているようだった。

「久しぶり、沙織。変わらないな、君は」

あなたの言葉に、私の心臓が跳ねた。変わらない？いいえ、あなたに出会ってから、私は確実に変わったのだ。

それからの日々は、まるで夢のようだった。夜の密会。人目を忍び、息を潜めて過ごす時間。あなたの腕の中で、私は初めて本当の自分になれた気がした。あなたの指先が肌をなぞるたび、身体の芯から熱が込み上げてくる。それは、抑えきれない欲望であり、同時に、禁断の愛に溺れる罪悪感でもあった。

「沙織、君の瞳は、まるで夜空に輝く星みたいだ」

あなたがそう言って、私の顔を覗き込むとき、私は全てを忘れた。夫のこと、世間の目、そして自分自身のことさえも。ただ、あなたの熱に酔いしれたい。このまま、あなただけのものになりたい。

ある夜、あなたは私をあなたのホテルの一室に連れて行った。窓の外には、きらめく夜景。部屋の中は、あなたが持ち込んだ異国の香りで満たされていた。

「今夜は、誰にも邪魔されない。君を、心ゆくまで…」

あなたの言葉に、私は震えた。これは、もう後戻りできない。それでも、私はあなたから逃れることができなかった。あなたの熱い吐息が肌を撫で、甘く、そして淫らに私を包み込む。

「濡らしてください、心ゆくまで…」

私の声は、部屋の静寂を破って、かすかに震えていた。あなたの口づけは、深く、そして熱く、私の抵抗を一切許さない。身体は、あなたに委ねきっていた。蜜壷は、あなたの熱で満たされ、禁断の愛の甘美な蜜を溢れさせていた。

その夜、私はあなたと、最初で最後の不貞行為に身を投じた。それは、魂を焦がすような、そして同時に、魂を汚すような、矛盾に満ちた体験だった。あなたの腕の中で、私は全身全霊であなたを求めた。そして、あなたもまた、私を、まるで芸術品を愛でるかのように、優しく、そして激しく愛してくれた。

朝、あなたは静かに私の頭を撫でた。

「もう、会うことはできないだろう。君には、守るべきものがある」

あなたの言葉は、私の心を深く抉った。分かっていた。それでも、この別れはあまりにも辛かった。

「ありがとう、沙織。君は、私の人生に、忘れられない輝きを与えてくれた」

あなたはそう言って、私の頬にキスをした。そして、静かに部屋を出て行った。

それから、私は一人、この部屋に残された。身体には、あなたの熱がまだ残っている。心は、あなたへの愛と、罪悪感で引き裂かれている。

窓の外は、すっかり秋の気配。枯葉が舞い、冷たい風が吹き荒れている。あの夏の熱は、もう遠い昔のことのように感じられる。

けれど、私は知っている。私の身体の奥底には、あの夜の記憶が、鮮明に、そして熱く刻み込まれていることを。あの禁断の愛は、私の人生に、決して消えることのない、甘く、そして罪深い傷跡を残した。

時折、ふとした瞬間に、あの夜のあなたの声が聞こえてくる気がする。「お願い、やめないで…」「濡らしてください、心ゆくまで…」

それは、私を幻惑する魔性の囁き。この罪深き記憶と共に、私は生きていかなければならない。あの夏の熱は、私の身体に、そして心に、永遠に刻み込まれた、禁断の蜜壷の熱なのだから。