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## 禁断の蜜月旅行

新緑が目に鮮やかな五月。エリカは、指定された駅の改札口でそわそわと辺りを見回していた。白いリネンのワンピースに身を包み、控えめなパールのネックレスが清楚さを際立たせている。年齢は三十代半ばだが、童顔と豊かなバストのせいか、もっと若く見られることが多い。

「エリカさん？」

声をかけられ、エリカはびくりと肩を揺らした。目の前に立っていたのは、黒のポロシャツにベージュのチノパンというラフな格好の男。涼しげな目元に、整った顔立ちをしている。

「あの、香坂です。今回、ご一緒させていただく」

香坂と名乗った男は、優雅に微笑んだ。エリカは緊張で強張っていた顔をほころばせ、小さく会釈をした。

「エリカです。よろしくお願いします」

今回の旅行は、インターネットで見つけた「中出し人妻不倫旅行」という企画だった。夫には仕事だと嘘をつき、エリカは一路、目的地の温泉地へと向かう。きっかけは、家計の苦しさだった。結婚前に付き合っていた元彼に貢いだ借金が、今もエリカの肩に重くのしかかっている。夫には内緒でコツコツと返済してきたが、不況の影響でボーナスが減り、返済が滞りそうになっていた。

藁にも縋る思いで応募したこの企画は、エリカにとって金銭的な救済策であり、同時に、心のどこかで求めていた非日常への逃避行でもあった。真面目で尽くすタイプの彼女は、結婚してからは家事に追われ、自分のための時間などほとんどなかった。恋愛のようなトキメキは、遠い昔の記憶の中に埋もれていた。

新幹線の中では、ぎこちない会話が続いた。香坂はエリカの緊張をほぐそうと、趣味の話や旅行先の情報などを積極的に話しかけてきた。エリカも少しずつ打ち解け、時折笑顔を見せるようになった。

温泉地に着くと、香坂は老舗旅館の離れを予約していた。庭園を望む広々とした部屋には、露天風呂も付いている。エリカは思わず息を呑んだ。こんな贅沢な空間は、結婚してから初めてだった。

「ゆっくりおくつろぎください。夕食まで、少し時間がありますね」

香坂はそう言うと、エリカに気兼ねなく部屋で過ごせるようにと、部屋を出て行った。

一人になったエリカは、窓から見える景色に目を奪われた。緑豊かな山々が連なり、小川のせせらぎが心地よい。都会の喧騒から離れ、自然に囲まれた空間に身を置いていると、心が洗われるようだった。

夕食は、個室でゆっくりと楽しむことができた。地元の食材を使った会席料理は、どれも手が込んでいて美味しかった。香坂はワインを勧め、エリカもグラスを傾けた。アルコールが回るにつれ、エリカの緊張はほぐれていった。

食事の後、香坂はエリカを露天風呂に誘った。最初は戸惑ったエリカだったが、香坂の優しい言葉に背中を押され、共に湯に浸かることにした。

月明かりの下、二人は静かに湯に浸かった。湯けむりが立ち上り、幻想的な雰囲気を醸し出す。香坂は、さりげなくエリカにタオルを差し出し、気遣いを見せた。

「エリカさんは、本当に綺麗ですね」

香坂は、静かにそう言った。エリカは顔を赤らめ、視線をそらした。

「そんな…」

「初めて会った時から、そう思っていました。清楚で上品で、それに…とても魅力的です」

香坂の言葉は、エリカの心の奥底に響いた。夫からそんなことを言われたのは、いつのことだっただろうか。

湯上り後、部屋に戻った二人は、再びワインを飲み始めた。会話は弾み、互いのことを少しずつ語り合った。エリカは、夫との関係や借金のことなど、誰にも打ち明けられなかった悩みを、香坂に打ち明けた。

香坂は、エリカの話を真剣に聞き、優しく励ました。そして、言った。

「エリカさんは、もっと自分を大切にするべきです。辛い時は、頼ってくれていい。僕は、いつでもエリカさんの味方です」

香坂の言葉に、エリカは涙が止まらなかった。今までずっと一人で抱え込んできた苦しみが、一気に解放されたようだった。

香坂は、そっとエリカを抱きしめた。温かい腕の中に包まれ、エリカは安堵感を覚えた。

「今夜は、僕に全てを預けてください。あなたの心を、体を開放してください」

香坂の囁きは、エリカの理性を溶かしていった。エリカは、無言で頷いた。

その夜、エリカは、ずっと忘れていた快感を思い出した。香坂の巧みなテクニックに身を委ね、乱れ狂った。心の奥底に閉じ込めていた感情が爆発し、喘ぎ声が部屋中に響き渡った。

翌朝、エリカは清々しい気持ちで目覚めた。昨夜のことは、まるで夢のようだった。香坂は、既に起きており、朝食の準備をしていた。

「おはようございます、エリカさん。よく眠れましたか？」

香坂は、優しく微笑んだ。エリカは、照れ臭そうに頷いた。

朝食後、二人は旅館の周辺を散策した。手をつなぎ、肩を寄せ合いながら歩く姿は、まるで恋人のようだった。

帰り際、香坂はエリカに、こう言った。

「今回の旅行で、エリカさんのことが、もっと好きになりました。もしよければ、これからも連絡を取り合いませんか？」

エリカは、嬉しそうに頷いた。

「はい、ぜひ」

駅の改札口で、二人は別れを告げた。エリカは、香坂に深く頭を下げた。

「本当に、ありがとうございました」

新幹線に乗り込んだエリカは、窓の外を眺めた。心の中に、温かい光が灯っているのを感じた。

今回の旅行は、確かに金銭的な目的もあった。しかし、それ以上に、エリカにとって心の癒しとなり、新たな自分を発見するきっかけとなった。

日常に戻ったエリカは、以前よりも明るく、生き生きとしていた。夫との関係も、少しずつ改善されていった。そして、時折、香坂からの連絡を楽しみに待つ自分がいた。

エリカは、この禁断の蜜月旅行を、一生忘れることはないだろう。それは、彼女の人生を変える、特別な出来事だったのだから。