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## 虚無と射精のあいだ

真夜中のコンビニ。蛍光灯の冷たい光が、雨に濡れたアスファルトに反射する。レジに並んだのは、四人の女の子。それぞれ、抱える闇の深さは違えど、どこか似たような影を宿していた。

一人目は、真白（ましろ）と名乗る、19歳の大学生。栗色の髪を肩まで伸ばし、大きな瞳はいつも虚ろな輝きを湛えていた。真白は、幼い頃に両親を事故で亡くし、以来、祖父母に育てられた。愛情に飢え、満たされない心の穴を、誰にも言えない孤独で埋めていた。大学では、誰とも深く関わろうとせず、授業が終わればすぐに一人暮らしのアパートに帰る日々を送っていた。

二人目は、凛（りん）と名乗る、22歳のOL。洗練された黒のワンピースに身を包み、クールな印象を与えていた。凛は、容姿端麗で、仕事もできる。しかし、その完璧な外見の裏には、激しい劣等感と空虚が渦巻いていた。裕福な家庭に育ち、期待に応えるため常に完璧を追求してきたが、その代償は大きかった。心の奥底では、本当の自分を認めてもらえないという絶望が根強く残っていた。

三人目は、彩花（あやか）と名乗る、20歳のフリーター。派手なメイクとカラフルな服装で、一見、明るく社交的な雰囲気を醸し出していた。しかし、その明るさは、内面の不安を隠すための仮面に過ぎなかった。彩花は、複雑な家庭環境で育ち、愛情を注がれることを知らずに生きてきた。誰かと繋がりたいと強く願いつつも、傷つくことを恐れ、本当の自分をさらけ出せないでいた。

四人目は、陽菜（ひな）と名乗る、17歳の高校生。制服姿で、少し幼げな顔立ちをしていた。陽菜は、学校では目立たない存在だったが、SNSでは活発に活動していた。しかし、それは現実逃避の一種だった。陽菜は、いじめや家庭の不和に苦しみ、現実から目を背けがちだった。インターネットの世界だけが、彼女にとっての居場所だった。

四人は、偶然同じコンビニで買い物をしていた。レジ待ちの間、何気ない会話が始まり、いつしか、それぞれの心の闇を語り合うようになった。共通点は、どれも満たされない孤独を抱え、心の隙間を埋めようともがいていることだった。

真白は、自分の抱える孤独を、まるで呪いのように語った。「もう、どうでもいいんです。いつ死んだって構わない。」彼女の言葉には、虚勢を張った強がりと、深い絶望が混ざり合っていた。

凛は、完璧なキャリアウーマンとして生きてきたが、それは虚しい自己満足に過ぎなかったと打ち明けた。「本当は、誰かに必要とされたい。愛されたい。」彼女は、涙をこらえながら、心の奥底に隠していた弱さを露わにした。

彩花は、いつも笑顔を絶やさず、周りの人に気を遣っていたが、それは疲弊した心を隠すための努力だった。「本当は、誰にも心を開けないんです。傷つくのが怖い。」彼女は、自分の心を守るために築き上げた壁を、少しずつ崩し始めていた。

陽菜は、SNSの世界に現実逃避していることを告白した。「インターネットの世界では、私を必要としてくれる人がいる。でも、それは本当の繋がりじゃない。」彼女は、現実と仮想世界の狭間で、苦しんでいた。

四人は、それぞれの話を聞いた後、奇妙な共感を覚えた。まるで、鏡を見ているかのようだった。そして、ある共通点に気がついた。「私達、みんな、どこかで満たされていない。」

その夜、四人は、それぞれの人生に絶望しながらも、奇妙な連帯感を抱き、一つの部屋に集まった。言葉では言い表せない、どうしようもない空虚感。その空虚を埋めるかのように、彼らは性行為に及んだ。

それは、決して愛や情熱に基づくものではなかった。それは、虚無を埋めるための、一時的な逃避だった。射精の瞬間だけ、生の実感を得て、偽りの笑顔を取り戻す。それは、彼らがこの残酷な現実を生き抜くための、歪んだ生存戦略だった。

翌朝、四人はいつもの生活に戻った。しかし、前夜の出来事は、彼らの心に深く刻まれた。それは、孤独と虚無の物語の、一つの断片に過ぎなかった。そして、彼らは、また、虚無と射精のあいだを彷徨う日々を続けることになる。彼らの孤独は、明日も、明後日も、続くのだ。  終わりなき、虚無の連鎖。  しかし、その連鎖の中に、微かな希望の光が見え隠れするのもまた事実だった。  それは、互いの存在を知り、共有した、静かな共感だった。  それは、いつか、彼らを救うかもしれない、小さな光だった。