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## 亀頭予報士　設楽の憂鬱な一日

「設楽さん、今日の予報、お願いします！」

スタジオの蛍光灯が、汗ばんだ私の額を照らす。カメラの赤いランプが不気味に点滅している。深呼吸をして、手元の亀頭予報端末を覗き込む。画面には、複雑なグラフと数値がびっしり。これは、私の命運、いや、全国の男性の命運を握る、今日の亀頭予報だ。

私は、亀頭予報士。国家資格を持つ、この国の数少ない精鋭の一人だ。この仕事は、決して華やかではない。むしろ、気色悪さと、重責の狭間で揺れる、茨の道と言えるだろう。だが、国民の生活を左右する重要な仕事でもある。なぜなら、亀頭予報は、単なる性的な欲求の予測ではないからだ。

亀頭予報は、精巣の温度、ホルモンバランス、睡眠時間、ストレスレベル、摂取カロリー、更には気圧や磁気嵐といった様々なデータを高度なアルゴリズムで解析し、その日の亀頭の「ぐずつき具合」「溜まり具合」「射精可能性」を数値化したものだ。これらの数値は、男性の行動パターン、ひいては社会経済活動にまで影響を与える。

例えば、「ぐずつき具合」が高い日は、集中力や作業効率が著しく低下する。重要な商談やプレゼンテーションを控えている男性にとって、これは死活問題だ。また、「溜まり具合」が高い日は、精神的な不安定やイライラが増加し、家庭内不和や職場でのトラブルに繋がる可能性もある。「射精可能性」は、言うまでもなく、その日の性的な活動やリフレッシュに大きく関わる。

今日の私の予報は……「ぐずつき具合：中～高」「溜まり具合：低」「射精可能性：低」。

「…はい、今日の亀頭予報ですが、ぐずつき具合は中～高と予想されます。集中力の低下が見込まれますので、重要な予定は避け、リラックスした時間を過ごすことをお勧めします。溜まり具合は低めです。性的な欲求はそれほど高まらないと予想されます。射精可能性も低いので、無理な行為は避けましょう」

スタジオのしもべ、雨宮は、私の予報を淡々と読み上げる。彼の表情はいつも通り、無表情だ。雨宮は亀頭予報の専門知識は持ち合わせていないが、私のサポートとして、日々淡々と業務をこなしてくれる頼もしい存在だ。彼のおかげで、私はこの厳しい現実の中でも、なんとか精神の均衡を保つことができる。

今日の予報は、正直、あまり良くない。中～高のぐずつき具合は、私の今日の仕事に大きな影を落とすだろう。午前中は、重要なクライアントとの打ち合わせが予定されている。集中力が低下するとなると、契約を逃す可能性もゼロではない。

打ち合わせを終え、オフィスに戻ると、頭がズキズキ痛む。予想通り、集中力が持たず、ミス連発。クライアントには何とか誤魔化せたものの、内心は疲労困憊だ。昼食も喉を通らず、午後からの予定は全てキャンセルした。

午後は、自宅でゆっくり過ごすことにした。しかし、予想外に「溜まり具合」は低く、「射精可能性」も低い。何とも言えない空虚感だけが胸に広がる。性的な欲求は無いのに、ただただ、倦怠感に襲われる。

夕方、近所の公園を散歩していると、一人の男性がベンチに座り込んでいた。彼は、私の予報端末とそっくりな端末を手に、呆然と空を見上げている。その端末には、「ぐずつき具合：高」「溜まり具合：高」「射精可能性：高」という文字が大きく表示されている。

彼の表情は、まるで絶望に染まっているようだった。彼の抱える苦悩が、私の心に突き刺さる。亀頭予報は、時には残酷な現実を突きつける。私自身も、その残酷さを日々痛感している。

しかし、この仕事は、決して無駄ではない。正確な予報によって、多くの人が心の準備をすることができる。そして、適切な行動をとることで、生活の質を向上させることができる。

私は、明日もまた、亀頭予報士として、国民の亀頭を予報する。それは、決して簡単な仕事ではないが、私に与えられた使命だ。そして、この重責を、これからも全うしていくと誓う。


深夜、雨宮からのメールが届く。「設楽さん、今日の予報、お疲れ様でした。明日の予報も、よろしくお願いいたします」

簡潔な言葉だが、その中に、彼の静かな信頼と、この仕事への責任感を感じ取ることができた。私もまた、彼に感謝を込めて、返信を送る。明日も、国民の亀頭を予報するために。そして、この国の男性たちの生活の質を、少しでも向上させるために。