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## 宵闇に誘われし、人妻たちの夜

新橋のガード下、提灯の灯りが雨に濡れたアスファルトに揺らめいていた。その中で、ひときわ賑やかな声が響く。「マスター、いつものやつ、大盛りで！」男の名は健一。彼はこの辺りの居酒屋を「狩場」と呼び、一人で静かに酒を嗜む女性、特に「一人でしっぽり飲んでいる美人妻」を狙う、自称「夜の狩人」だった。結婚4年目、セックスレスという家庭の事情から、女性との繋がりに飢えている彼にとって、居酒屋は唯一の「楽しみ」であり、そして「狩場」でもあった。

今夜の「獲物」は、カウンターの隅でグラスを傾ける、落ち着いた雰囲気の女性だった。黒髪は艶やかで、首筋のラインが上品に弧を描いている。彼女が「すみれ」と名乗ったのは、健一が何気なく話しかけ、隣に座った後のことだった。

「いい夜ですね。こんな雨の夜は、一杯やりたくなりますよね」

健一は、お世辞ではなく、心からの賞賛を込めて言った。すみれは少し戸惑ったように微笑んだが、健一の軽快なトークと、屈託のない笑顔に、次第に心を開いていくようだった。

「実は、主人との関係が…」

すみれは、ぽつりぽつりと、胸の内を語り始めた。結婚4年目、夫婦仲は悪くない。しかし、いつからか、夫婦の営みが途絶えていた。原因は自分にあるのではないかと、彼女は健気に悩んでいた。義母は家事が得意で、夫はすみれの負担を減らそうと、家事をほとんど一人でこなしていた。すみれは、夫に迷惑をかけまいと、健気にも家事や夫の世話を焼こうとするが、その真面目さが、かえって夫との間に溝を生んでいるのかもしれない、と不安を募らせていた。

「でも、すみれさん、あなたは奥さんとして、妻として、何一つ間違ったことはしていないと思いますよ。きっと、ちょっとしたきっかけで、また旦那さんとラブラブになれるはずです」

健一は、すみれの肩を優しく撫でた。その言葉は、すみれの心に温かく染み渡った。誰かに話を聞いてもらうだけで、こんなにも心が軽くなるのかと、彼女は驚いた。

一方、別の居酒屋で、せなは一人、グラスの底を眺めていた。楽しみにしていた女子会が、突然のメンバーの体調不良で延期になったのだ。今更、一人で家に帰っても、夫は仕事で遅い。かといって、こんな時間に帰るのは気まずい。彼女は、衝動的に近所の居酒屋に飛び込んだのだった。

「あー、もう！最悪！」

せなの口から漏れたのは、ため息交じりの愚痴だった。隣の席に座っていた男が、ニヤニヤしながらこちらを見ていた。それが、健一だった。彼は、すみれとの会話を終えた後、次の「獲物」を探していたのだ。

「どうしました？何かあったんですか？」

健一は、せなの隣に滑り込んだ。せなは、彼の勢いに押されるように、女子会の延期と、その後の気まずい状況を説明した。

「それは大変でしたね。でも、せっかくの夜、このまま落ち込んでるのはもったいないですよ。僕と、もっと楽しい夜にしませんか？」

健一は、悪魔のような囁きで、せなを誘惑した。せなは、健一の顔をまじまじと見つめた。酔いも手伝って、彼の軽快なトークに、抗えない魅力を感じていた。

「うち、ちょっと面白い部屋があるんですよ。そこで、もっとゆっくり話しませんか？」

健一は、事前にカメラを設置しておいた、彼の「秘密の部屋」へと、二人の人妻を連れ込もうとしていた。すみれは、健一の優しさに触れ、心惹かれていた。せなは、健一の誘惑に、抗いきれなくなっていた。

健一は、まずすみれを連れて、彼の自宅へと向かった。部屋に入ると、そこには、柔らかな照明と、心地よい音楽が流れていた。健一は、すみれの隣に座り、二人の距離を縮めようとする。

「すみれさん、本当に綺麗ですよ。旦那さん、なんでこんな素敵な奥さんを放っておくんだろう」

健一の言葉は、すみれの心をくすぐった。彼女は、健一の言葉を否定することなく、ただ静かに微笑んでいた。健一は、その隙を見逃さなかった。彼は、すみれの手にそっと触れた。

「あの、すみれさん…」

健一が、さらに一歩踏み込もうとしたその時、すみれの携帯電話が鳴った。夫からだった。

「ごめんなさい、私、帰ります」

すみれは、突然立ち上がった。健一は、思わず呆然とした。

「でも、まだ…」

「ごめんなさい。でも、ありがとう。少し、元気が出ました」

すみれは、そう言い残し、足早に部屋を出て行った。健一は、思わずため息をついた。

一方、せなは、健一の誘いに乗り、彼の「秘密の部屋」へと向かっていた。部屋に入ると、そこには、見慣れない光景が広がっていた。部屋の隅に、怪しげな機材が設置されている。せなは、異変に気づいた。

「あの、これって…」

「まあ、ちょっとした趣味でね。せっかくなら、この夜を、もっと忘れられないものにしたくて」

健一は、悪びれる様子もなく、そう言った。せなは、背筋に冷たいものが走るのを感じた。彼女は、健一の本当の目的を悟り、恐ろしくなった。

「私、帰ります！」

せなは、急いで部屋を出ようとした。しかし、健一は、彼女の腕を掴んだ。

「待ってくださいよ、せっかくここまで来たのに」

せなの悲鳴が、夜の静寂に響き渡った。

その夜、健一は、二人の人妻を、それぞれ別の感情を抱かせた。すみれは、健一との出会いをきっかけに、夫との関係を見つめ直すきっかけを得た。せなは、健一の狡猾さに、深い傷を負った。

健一は、いつものように、また次の「狩場」へと向かう。彼の「楽しみ」は、これからも続いていくのだろう。しかし、その「楽しみ」が、誰かを不幸にしていることを、彼はいつになったら気づくのだろうか。宵闇に誘われし、人妻たちの夜は、それぞれの想いを胸に、静かに更けていった。