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## 団地の午後三時

団地の午後は、独特の静けさに包まれる。子供たちの声は小学校の校庭に吸い込まれ、主婦たちは夕食の支度にはまだ早い時間を持て余し、テレビの音だけがそれぞれの部屋から漏れ聞こえてくる。

三号棟の四階に住む美咲も、そんな午後の静寂の中にいた。結婚して三年、夫の健太は毎日遅くまで仕事で、家にいる時間は短い。美咲は専業主婦として、家事をこなしながらも、心の奥底に満たされない何かを感じていた。

きっかけは、近所のスーパーで偶然出会った女性だった。名前は陽子。いつも艶やかな服装で、どこか余裕のある雰囲気を漂わせていた。陽子とはすぐに打ち解け、団地の悩みや噂話をするようになった。

ある日、陽子は美咲に「ちょっと変わったアルバイトがあるんだけど、興味ない？」と声をかけた。詳しく聞くと、それはアダルトビデオの出演だった。最初は驚いた美咲だったが、陽子の巧みな話術と、何よりも心の奥底にあった「何か」が彼女の背中を押した。

「だって、美咲ちゃん、もったいないわよ。その美貌とスタイル。健太さんだけじゃ損よ」

陽子の言葉は、美咲の心の奥底に眠っていた欲望を刺激した。健太は仕事人間で、美咲のことを女性として見てくれているのか不安になることもあった。それに、陽子の話を聞いているうちに、何か新しい自分を発見できるかもしれない、という期待も芽生えてきた。

結局、美咲は出演を決意した。陽子から紹介された撮影スタッフは、プロフェッショナルで、丁寧に説明してくれた。最初は緊張したが、撮影が進むにつれて、美咲は次第に解放されていくのを感じた。

撮影は、健太が仕事で不在の平日に行われた。美咲は、今まで誰にも見せたことのない自分の姿をさらけ出した。羞恥心と興奮が入り混じり、新しい自分を発見する喜びを感じた。

最初は抵抗のあった「近所をトビッコをつけて歩きまわされる羞恥プレイ」も、いざやってみると、意外なほど興奮した。見知らぬ人に自分の姿を見られる恥ずかしさと、そこから生まれる快感が、美咲の心を揺さぶった。

ハメ撮りマニアの夫を持つ陽子は、夫の浮気に当てつけで出演を決めたという。撮影中、陽子は淡々としながらも、時折悲しそうな表情を見せた。美咲は、陽子の心の奥底にある寂しさを感じ、そっと寄り添った。

別の出演者の女性は、普段は地味な主婦だが、脱いだら驚くほどの爆乳ボディの持ち主だった。彼女は、自分の体に自信がなく、ずっとコンプレックスを抱えていたという。しかし、撮影を通して、自分の体の美しさに気づき、自信を取り戻した。

撮影を終えた美咲は、何かが変わったように感じた。心の奥底にあった満たされない何かが、少しだけ埋まった気がした。健太に対して、今まで感じたことのない感情が芽生えた。それは、愛と同時に、少しばかりの罪悪感と、そして、秘密を共有する快感だった。

数ヶ月後、陽子から連絡があった。「美咲ちゃんが出演した作品、ベスト盤になるらしいわよ」

美咲は、複雑な気持ちになった。自分の秘密が、多くの人の目に触れることになる。しかし、同時に、自分の新しい一面が認められたような気がした。

ベスト盤の発売後、美咲の生活は少しだけ変わった。近所の人の視線が、以前とは違うように感じた。噂話も耳に入ってくるようになった。しかし、美咲はそれを気にしないことにした。

ある日、健太が帰宅して、美咲に話しかけた。「美咲、ちょっと話があるんだ」

美咲は、心臓がドキドキした。ついに、健太に秘密がバレてしまったのか。

健太は、少し照れながら、言った。「あのさ、最近、美咲が綺麗になった気がするんだ。何かあったのか？」

美咲は、健太の目をまっすぐ見て、微笑んだ。「秘密よ」

美咲は、自分の秘密を、誰にも打ち明けるつもりはなかった。それは、美咲だけの秘密であり、美咲が自分自身を見つめ直すきっかけとなった出来事だった。

団地の午後は、今日も静かに過ぎていく。それぞれの部屋から漏れ聞こえるテレビの音と、それぞれの住人の心の奥底にある秘密だけが、団地の日常を彩っている。そして、美咲は、秘密を抱えながらも、新しい自分を見つけ、一歩ずつ、前に進んでいく。

陽子からベスト盤を受け取った美咲は、一人、団地のベランダに出た。遠くに見える夕焼けが、団地の壁をオレンジ色に染めている。美咲は、ベスト盤を手に取り、表紙に写る自分の姿をじっと見つめた。

それは、今まで見たことのない、妖艶な美しさを持った女性だった。美咲は、そっとベスト盤を抱きしめ、夕焼け空に向かって、小さく微笑んだ。

団地の午後三時。それは、美咲にとって、秘密と欲望が交差する、特別な時間だった。そして、その秘密は、これからも、美咲の心の奥底で、静かに輝き続けるだろう。