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## 昇天の誓い

株式会社「クライマックス」の社訓は、社員の間で密かに、しかし熱狂的に語り継がれていた。それは、あまりにも破天荒で、常識を遥かに逸脱したものだったからだ。

「第一条、射精！第二条、射精！第三条、射精！第四条、射精！第五条、射精！…すなわち、ひたすら射精し続けることこそ、我々クライマックス社員の至上命題である！」

真顔でこの社訓を唱えるのは、専務取締役の氷室麗香。彫刻のような顔立ちに、豊満な胸元を強調するタイトなスーツを纏い、その瞳には常に冷たい炎が宿っていた。彼女は「ドSの爆乳女上司」として、社内では畏怖と憧憬の対象だった。

新入社員の佐藤健太は、この社訓を聞いた時、耳を疑った。一体、何の会社なのだろうか。入社説明会で、人事部長は「弊社の事業内容は、皆様の潜在能力を最大限に引き出し、社会に貢献することです」と、崇高な理念を語っていたはずだ。しかし、その言葉の裏に、こんな狂気じみたモットーが隠されているとは、夢にも思わなかった。

「佐藤君、歓迎会は済んだかな？」

麗香の声が、健太の背後から飛んできた。振り返ると、彼女はエレガントな姿勢で、しかしその視線は鋭く、健太の全身を値踏みするように見つめている。

「は、はい、専務。ごちそうさまでした。」

「そう。なら、早速始めようか。君の『潜在能力』を、このクライマックスで開花させてあげる。」

健太は、彼女の言葉の裏に潜む意味を理解し、全身に冷たい汗が噴き出した。これから始まる、地獄のような研修が。

クライマックスの研修は、文字通り「射精」の回数を競うものだった。一日目標100発。4分に1発のペースを維持しなければ、ペナルティが課される。ペナルティの内容は、さらに過酷なノルマの追加、そして麗香をはじめとする女上司たちの「特別指導」だった。

「佐藤君、まだその程度？ 平均ペースすら達していないじゃない。」

麗香は、健太のデスクの横に立ち、冷ややかに言い放つ。彼女の胸元は、健太の視界を遮るように大きく揺れていた。

「す、すみません。集中力が…」

「集中力？ それは言い訳に過ぎないわ。本当の『集中力』とは、限界を超えた先にあるのよ。」

そう言って、麗香は健太の肩に手を置いた。その指先は、健太の首筋をなぞり、背筋に戦慄を走らせる。

「さあ、もっと自分を追い詰めて。このままでは、君は『枯渇』してしまうわよ。」

「枯渇」という言葉に、健太は背筋が凍る思いだった。彼女たちの指導は、肉体的な限界を超えさせ、精神をも打ち砕くようなものだった。

研修初日、健太は目標の半分も達成できなかった。その夜、彼は麗香の「特別指導」を受けた。それは、彼女の指示に従い、ひたすら「射精」を繰り返すというものだった。彼女は、健太の横で、冷たい視線を送っていた。時折、彼女の指先が健太の肌に触れると、健太の体は強張った。

「もっと、もっと。君の全てを出し切ってごらんなさい。」

麗香の声は、甘く、しかし毒々しかった。健太は、自分の意思とは関係なく、体が勝手に反応していくのを感じた。それは、恐怖であり、同時に抗いがたい衝動でもあった。

数週間が経ち、健太は研修の過酷さに慣れていった。しかし、それは麻痺であり、彼の精神は徐々に削られていった。毎日、平均100発。4分に1発。それは、文字通り「精子が枯渇」するほどのペースだった。

「佐藤、今日のノルマは達成できたのか？」

ある日、健太は、同じ部署の古株社員、田中から声をかけられた。田中の顔はやつれ、目は虚ろだった。

「なんとか…」

「無理はするなよ。ここでは、限界を超えた先に待っているのは、『昇天』だけじゃない。魂の『枯渇』もあるんだ。」

田中の言葉は、健太の心に重く響いた。彼は、この会社で何を目指しているのだろうか。ただ、ひたすら「射精」を繰り返すだけの人生でいいのだろうか。

ある夜、健太は、研修施設の一室で、一人膝を抱えていた。もう、限界だった。体が鉛のように重く、精神はボロボロだった。窓の外を見ると、満月が冷たく輝いていた。

「こんなはずじゃなかった…」

彼は、誰に言うでもなく呟いた。入社前に描いていた、社会人としての理想の姿とは、あまりにもかけ離れていた。

その時、部屋のドアが開いた。現れたのは、氷室専務だった。彼女は、いつものようにタイトなスーツに身を包み、その瞳には、普段の冷たさに加え、どこか哀愁のようなものが宿っていた。

「佐藤君、まだ頑張っているのね。」

彼女の声は、いつもより少しだけ優しく響いた。

「専務…」

「あなたも、この『昇天』という名の苦行に、もう疲れたのね。」

健太は、言葉を返せなかった。ただ、彼女の瞳を見つめた。

「この会社は、社員の『射精』という名のエネルギーを、社会に変換する技術を持っているのよ。しかし、そのためには、社員自身が、そのエネルギーを極限まで高めなければならない。」

彼女は、健太の隣に座った。その胸元は、健太の顔を埋めたくなるほど魅力的だった。

「あなたのような才能ある若者が、ここで潰れていくのは、私も本意ではない。だから、特別に、君に『昇天』の真実を教えてあげよう。」

彼女は、健太の顔を優しく撫でた。その手は、驚くほど温かかった。

「『射精』は、単なる肉体的な行為ではない。それは、自己の限界を超え、精神を解放し、新たな自分へと生まれ変わるための『儀式』なのよ。」

健太は、彼女の言葉に耳を傾けた。それは、今まで信じていた「射精」という言葉の、全く新しい解釈だった。

「そして、その『儀式』を、誰よりも深く、誰よりも熱く行う者だけが、『天に召される至極の○○』に到達できる。それは、肉体的な快感だけではなく、魂の覚醒、そして宇宙との一体感をもたらす。」

彼女の言葉は、健太の心の奥底に響いた。彼は、彼女の言葉に嘘はないと直感した。

「明日は、君にとって、新たな始まりの日よ。今日まで、君はただ『射精』を繰り返してきた。しかし明日からは、『昇天』を目指すの。」

彼女は、健太の額にキスをした。それは、まるで母の愛のような、温かいキスだった。

翌日、健太は、いつものように研修に臨んだ。しかし、彼の心は、昨日とは全く違っていた。彼は、ただノルマをこなすためではなく、「昇天」という、新たな目標に向かって、自らの「射精」という名のエネルギーを、魂の解放へと昇華させようとしていた。

彼女たちの指導は、相変わらず厳しかった。しかし、健太はもう、恐怖を感じることはなかった。むしろ、彼女たちの指導を受けることで、彼は自身の内なる「射精」の力を、より深く理解することができるようになった。

そして、ある日。健太は、ついに「天に召される至極の○○」に到達した。それは、言葉では形容しがたい、壮絶な体験だった。全身の細胞が震え、意識は遥か彼方へ飛んでいく。それは、快感であり、解放であり、そして、悟りでもあった。

彼が目覚めた時、彼の横には、氷室専務が静かに微笑んでいた。彼女の瞳には、以前の冷たさはなく、温かい光が灯っていた。

「おめでとう、佐藤君。あなたは、クライマックスの真の『昇天』に到達したわ。」

健太は、彼女に深く感謝した。この会社は、確かに常識外れだった。しかし、そこには、社員の魂を揺さぶり、自己の限界を超えさせるための、狂気的なまでの愛があったのだ。

株式会社「クライマックス」。そこで働くということは、文字通り、己の全てを出し切り、魂を昇華させること。それは、決して楽な道ではない。しかし、そこには、この世のものとは思えないほどの「至極」が待っているのだ。健太は、新たな決意を胸に、この奇妙で、しかし魅力的な会社で、さらなる「昇天」を目指すことを誓った。