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秋の夕暮れ、街の灯りがオレンジ色に染まる頃、私はカフェの窓際に座っていた。暖炉の火がパチパチと音を立て、心地よい暖かさで身体を包み込む。待ち合わせの時間まで少し余裕があったので、ホットミルクをゆっくりとすすっていた。

数分後、カフェのドアが開き、風が舞い込んだ。そして、彼女が現れた。向井藍。高校時代の同級生で、ショートカットの髪型がトレードマークだった彼女。数年ぶりに会う彼女には、高校時代のかわいらしい面影と同時に、母性的な色気を感じた。

「久しぶり！」

彼女の笑顔は、まるで秋の夕陽のように温かく、私を包み込んだ。ショートカットの髪は、少し伸びて肩に届くくらいになっていた。上品な服装に、さりげなくつけられた香水の香りが、彼女の存在感をさらに際立たせていた。

「藍ちゃん、変わってないね。いや、もっと素敵になってる」

思わずそう口にしてしまった。高校時代、彼女は誰からも好かれる明るい女の子だった。いつも笑顔で、誰に対しても分け隔てなく接していた。勉強もできて、運動も得意で、おまけに容姿端麗。まさに理想の女の子だった。

しかし、私は彼女に近づく勇気がなかった。いつも彼女を取り巻く輪の外から、ただ彼女の笑顔を眺めているだけだった。そんな私が、こうして大人になって再会するとは、まるで昔話のようだった。

彼女は、テーブルに置かれた私のホットミルクに気づくと、「あら、ミルク飲んでいるの？ 私、コーヒーにしたんだけど、一口もらってもいい？」と、まるで幼い子供に接するように、優しく尋ねてきた。その仕草に、彼女の母性的な魅力が強く感じられた。

コーヒーを交換し、私たちは近況報告を始めた。彼女は、結婚して子供がいるという話だった。想像もしなかったことで、私は少し驚いたが、彼女からは幸せが溢れているのが伝わってきた。

「子供は、もう３歳になったの。毎日大変だけど、本当にかわいいのよ」

彼女は、子供のことを話すとき、目元がキラキラと輝いていた。その輝きは、高校時代、勉強や部活動に打ち込んでいた頃の輝きとはまた違った、母としての輝きだった。

彼女は、子供の写真を見せてくれた。くりくりとした大きな目と、彼女のショートカットを彷彿とさせる短い髪を持つ、可愛らしい男の子だった。その写真を見ながら、彼女が子供に語りかける様子を見ていたら、私の心に不思議な感情が芽生えた。

「あのね、ママはね…」

彼女は、子供に話しかけるように、私に話しかけてきた。それは、まるで子供を寝かしつける時の優しい声色だった。その声の柔らかさ、そして、私に語りかける彼女の柔らかな視線。その全てが、私を魅了した。

「あのね、最近ね、目が疲れるのよ。一人で目薬もなかなかうまくできないの」

彼女は、少し困ったように言った。高校時代、一人で目薬も点せなかった彼女。そのことを覚えているのは、私だけだろう。そのことを思い出した時、彼女の母性的な魅力が、より一層際立ったように感じた。

彼女は、少し照れくさそうにしながら、自分の目薬を私に渡してきた。そして、「ちょっと手伝ってくれる？」と、お願いしてきた。

彼女の目の前に近づくにつれ、彼女の柔らかな肌の感触、そして、彼女から漂う上品な香水の香りが、私の五感を刺激した。彼女の瞳の奥には、高校時代には見られなかった深みと色気があった。

彼女の目薬を点してあげた時、彼女の柔らかな肌に触れた時、私は初めて彼女の魅力の真髄に触れた気がした。それは、単なる容姿の美しさではなく、彼女の優しさ、温かさ、そして母性から溢れ出る色気だった。

「ありがとう」

彼女は、目を閉じたまま、静かにそう言った。その言葉に、彼女の感謝の気持ち、そして、私への信頼が込められているように感じた。

カフェを出る頃には、空はすっかり暗くなっていた。再び、彼女と別れる時が来た。しかし、今回の再会は、私にとって忘れられないものになった。

彼女は何年経とうと、相変わらず素敵だった。そして、その魅力の秘密は、彼女の優しさ、温かさ、そして母性の中にあった。それは、誰からも愛される所以であり、彼女だけが持つ、独特の魅力だったのだ。  あの時、私は、彼女の魅力を初めて、そして深く体感したのだった。