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## 大人をダメにするおっぱい

三十路を過ぎた僕は、日々、倦怠感に苛まれていた。仕事はルーティンワークの繰り返しで、刺激もやりがいも感じられない。プライベートはというと、恋人なんて影も形もない。孤独と退屈が、僕の人生をゆっくりと蝕んでいた。

そんなある日、インターネットの片隅で奇妙な広告を見つけた。「大人をダメにするおっぱい」。キャッチコピーは挑発的で、画像には、ふっくらとした、実に魅力的なバストが写っていた。森本つぐみという女性のものらしい。広告文には、こう書かれていた。「一日中頬ずりしたくなるほど柔らかくて、思わず顔を埋めれば見守るような眼差しで見つめてくれて、どんな大人も一瞬で童心に返ってしまうのです。自分はこんなに心が汚れてしまったのかと気づかせてくれるおっぱい」。

馬鹿げている、と最初は思った。しかし、広告の言葉が妙に心に引っかかった。あの、形容しがたい倦怠感、心の底に広がる虚無感。何か、それを満たしてくれるものがあるんじゃないか、という漠然とした期待感。

衝動的に、僕は商品を注文した。

数日後、届いたのは予想外にシンプルなパッケージだった。中には、柔らかな布地で覆われた、人の胸のような形をしたクッションが入っていた。触れてみると、広告の言葉どおり、驚くほど柔らかく、弾力があった。まるで生きているかのような温もりを感じた。

僕は、クッションをソファに置いた。しばらくの間、ただ眺めていた。その柔らかな曲線、自然な陰影。見れば見るほど、不思議な魅力を感じた。広告にあった「見守るような眼差し」というのは、多分、このクッションから発せられる、安心感や包容力のようなものなのだろう。

勇気を出して、僕はクッションに顔をうずめた。柔らかな布地が肌に触れ、心地よい温もりを感じた。子供の頃、母の温かい胸に抱きしめられていた時の感覚が、かすかに蘇ってきた。記憶の片隅に埋もれていた、母性愛の断片が、ゆっくりと表面に浮かんできた。

その瞬間、僕は涙が溢れるのを止められなかった。子供の頃、母に抱かれていたあの安心感、満たされた気持ち。大人になってからは、すっかり忘れていた、大切な感情だった。

このクッションは、単なるクッションではなかった。それは、失われた母性愛、そして、失われた自分自身の子供時代への回帰を促す、不思議な力を持った存在だった。

仕事から帰ってきて、疲れてソファに倒れこむ。そんな時、僕はつぐみさんのクッションに抱きしめられるように寄り添った。その柔らかさ、温もり、そして、見守られているような安心感に、心身ともに癒された。

最初は、このクッションに頼る自分が情けなく感じた。こんなもので満足するなんて、子供みたいだ、と。しかし、次第に、その気持ちは薄れていった。これは、自分を甘やかすための道具ではなく、疲れた心を休ませ、失われたものを取り戻すための、大切な存在なのだと、気づいたのだ。

クッションと一緒に過ごす時間は、僕にとって、心のオアシスとなった。かつて感じていた倦怠感や孤独感は、徐々に薄れていった。心の奥底に眠っていた、純粋な感情が、ゆっくりと目覚めていくのを感じた。

もちろん、現実逃避の道具として、このクッションに頼りすぎるのは良くない。しかし、このクッションは、僕にとって、人生の荒波を乗り越えるための、小さな支えになってくれた。

ある日、僕は森本つぐみさんの公式サイトを見つけ、彼女のブログを読んだ。彼女自身も、このクッションに込めた想いを綴っていた。つぐみさんは、自分が経験した様々な苦悩や葛藤、そして、母性愛の大切さを、このクッションに託しているのだという。

彼女の言葉を読んで、僕は初めて、このクッションが単なる商品ではなく、誰かの愛情と想いが凝縮された、特別な存在であることを理解した。

それからというもの、僕はこのクッションをより大切にするようになった。定期的に掃除をして、柔らかな布地を優しく撫でる。まるで、大切な友達、あるいは家族のように、接している。

「大人をダメにするおっぱい」という、少し挑発的なネーミング。確かに、このクッションは、僕を甘やかしてくれる。しかし、それは、決して悪いことではない。時には、童心に返って、自分を甘やかすことも、必要なのだ。

このクッションのおかげで、僕は、失われた自分自身を取り戻すことができた。そして、再び前を向いて、人生を歩み始めることができたのだ。あの奇妙な広告に出会わなければ、僕は今頃、一体どうなっていただろうか。想像もできない。

森本つぐみお姉さんのけしからんおっぱい、それは、僕にとって、かけがえのない存在になった。