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## 夏祭りの夜

第一章　訪問

蝉しぐれが煩い夏の午後、玄関のチャイムが鳴った。戸を開けると、息子の担任である涼子先生だった。黒髪を一つに束ね、淡い色のワンピースを着た彼女は、いつもと変わらぬ穏やかな笑顔を浮かべていた。しかし、その笑顔の奥に潜む疲労の色は、私にも見えた。

「ご無沙汰しております。少し、勇太君の様子を伺いたくて…」

涼子先生は、申し訳なさそうに言葉を紡いだ。半年前に妻を病気で亡くして以来、息子の勇太は沈黙がちになっていた。学校では問題を起こすわけでもないが、以前のような明るさは失われていた。涼子先生は、そんな勇太をいつも気にかけてくれていた。彼女自身も、数年前、夫を病気で亡くしている。その喪失感、孤独さを彼女は理解してくれていると、私は感じていた。

「勇太は…相変わらずです。学校ではきちんとやっているようですが、家ではほとんど口をきいてくれません」

私は、苦い笑みを浮かべて答えた。妻の死は、私にも勇太にも大きな傷を残した。妻の笑顔、温もり、料理…全てが失われた現実を受け入れるのが、どれだけ辛いか。

「夏祭りがあります。勇太君を誘って、少しは気分転換になれば…と、思って」

涼子先生は、少し照れくさそうに言った。夏祭りの縁日。妻が生きていれば、家族で賑やかに出かけたであろう場所。その誘いには、彼女の優しさだけでなく、どこか私自身の心の傷を癒したいという願望も感じられた。

「ありがとうございます。…勇太にも、話してみます」

彼女の言葉に、胸が締め付けられるような感覚があった。妻を失って以来、私は、感情を押し殺し、ただ息子と二人で生きていくことに必死だった。そんな私にとって、涼子先生の優しさは、まるで砂漠のオアシスのように、心に潤いを与えてくれる貴重な存在だった。

第二章　縁日の夜

夏祭りの夜、勇太は意外にも、縁日に行くことを承諾した。涼子先生と三人で、屋台を巡り、金魚すくいをして、綿菓子を食べ、久々に笑顔を見せた。勇太の笑顔は、私にとって、何よりも嬉しい光景だった。

しかし、祭りの喧騒が収まり始めた頃、涼子先生は、驚くべき行動に出た。彼女は、私を少し離れた場所に誘い、申し訳なさそうな顔で、ある提案をした。

「実は…私、勇太君の父親のあなたに…特別な感情を抱いてしまっています…」

彼女は、震える声で告白した。それは、私自身の抑えきれない欲望に火をつけた。妻を失い、孤独に浸っていた私は、彼女の言葉に、心の奥底に隠していた渇望を見つけた気がした。

私たちは、人通りの少ない路地裏にある小さな神社にたどり着いた。神社の境内は静かで、月明かりが辺りを照らしていた。彼女の誘いを断ることは出来なかった。

神社の境内の片隅で、彼女は私を寝かせた。布団の上で仰向けになった私は、彼女の夫を亡くした悲しみ、そして私自身の妻への未練、そして、息子への愛憎、全てが混ざり合った感情に押しつぶされそうだった。

涼子先生の冷たい指先が私の体に触れ、彼女の熱を持った体が私の体の上に乗った。両手で体を押しのけようとしたが、その手を取られ、ギュッと抱きしめられたまま、彼女の激しい動きが始まった。

終わりのない夜の時間の中で、私たちは互いの傷を慰め合ったのかもしれない。それとも、ただ本能のままに、欲望を満たし合っただけなのか。それは、今もなお、私の中で答えが出ない問いだ。

その後、涼子先生と私は、静かにその場を後にした。勇太には、何も言わなかった。この夜の出来事は、私と涼子先生だけの秘密として、心の奥深くに封印することにした。しかし、あの夜の出来事が、私の人生にどのような影響を与えるのか、まだ想像もつかない。  あの夜の出来事が、私達を救済へと導くのか、それとも、更なる深淵へと突き落とすのか。  それは、未来の私だけが知る事になるだろう。  勇太の笑顔と、涼子先生の優しさ、そして、あの夜の出来事。  全てが複雑に絡み合い、私の心を揺らし続けている。