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## 欲望都市 - 八時間のエロス・アンダーグラウンド

新宿ゴールデン街の片隅にある、埃っぽい雑居ビルの三階。蛍光灯の光がチラチラと瞬く、まるで廃墟のような空間に、私はいた。目の前には、使い古されたMacBook Proと、山のように積まれた資料。そして、煙草の煙が立ち込める部屋の中で、男が一人、深々と椅子に座っていた。

男の名は、佐竹。かつては週刊誌の敏腕記者だったが、今はフリーランスのライターとして、都市伝説やアングラな情報を専門に追いかけている。私、水沢は、佐竹の助手として、この『欲望都市』プロジェクトに参加することになった。

「水沢さん、準備はいいですか？」佐竹は、深く吸い込んだ煙をゆっくりと吐き出し、低い声で言った。「これから、あなたは東京の裏側を見ることになる。光が強ければ強いほど、影は濃くなる。覚悟しておいてください。」

『欲望都市』。それは、巷で囁かれるエロティックな都市伝説を徹底的に調査し、その真相に迫るという、前代未聞の企画だった。収録時間は八時間。現代に蔓延る、犯罪スレスレのアングラなエロ映像、○撮マニアの投稿、泥○女性の拉致サークル、許可を取っていない闇風俗…都市に沈殿する、抑えのきかない人間の欲望が暴走する様を、余すことなく記録する。

私たちはまず、インターネットの深層、いわゆるダークウェブに潜む、○撮マニアのコミュニティに接触を試みた。匿名性の高いプラットフォームをいくつか経由し、ようやく辿り着いたのは、歪んだ快楽を求める男たちが集う、秘密の掲示板だった。

そこに投稿されていたのは、信じられないような映像だった。盗撮された女性たちのプライベートな姿。同意のないまま、性的対象として消費される映像の数々。佐竹は、冷静な表情で画面を見つめ、キーボードを叩きながら、投稿者の情報を収集していく。

「彼らは、承認欲求の塊なんです」佐竹は、画面から目を離さずに言った。「自分の歪んだ欲望を認められたい、共有したい。だから、リスクを冒してまで、こういった映像をアップロードする。」

次のターゲットは、泥○女性の拉致サークルだった。これは、都市伝説の中でも特に悪質な部類に入る。女性を薬物で眠らせ、拉致し、性的暴行を加えるというものだ。真偽不明の情報が飛び交う中、佐竹は、独自のルートで情報を収集し、実際にそういったサークルが存在する可能性を示唆する証拠を掴んだ。

「彼らは、自分たちの行為を正当化するために、様々な理屈を並べ立てるんです」佐竹は、憤りを隠せない口調で言った。「女性を解放するためだとか、社会の歪みを正すためだとか…すべて、自分たちの欲望を隠すための詭弁に過ぎません。」

そして、私たちが最後に辿り着いたのは、許可を取っていない闇風俗だった。表向きはマッサージ店やエステサロンとして営業しながら、裏では売春行為を行っている。私たちは、実際にそういった店に潜入し、内部の実態を調査した。

店の中は、薄暗く、怪しげな雰囲気が漂っていた。若い女性たちが、無表情で客を迎えている。彼女たちは、生活のため、借金のため、様々な理由で、この世界に足を踏み入れたのだろう。佐竹は、彼女たちに話を聞き、その過酷な現実を記録していく。

「彼女たちは、搾取されるだけの存在ではありません」佐竹は、店を出てから言った。「彼女たちもまた、自分の人生を生きようと、必死にもがいている。私たちは、彼女たちの声に耳を傾けなければならない。」

八時間に及ぶ調査を終え、私たちは、疲れ切った体を引きずりながら、雑居ビルを後にした。夜空には、煌びやかなネオンサインが輝き、欲望に満ちた都市の姿を象徴しているようだった。

「どうでしたか、水沢さん？」佐竹は、煙草に火をつけ、私に尋ねた。「これが、東京の裏側です。美しい光の裏には、必ず醜い影が隠されている。それを忘れないでください。」

私は、深く頷いた。今回の調査で、私は、人間の欲望の深淵を覗き見た。それは、目を覆いたくなるような、醜悪な光景だった。しかし、同時に、人間の強さ、脆さ、そして、生きるための切実な願いも感じた。

『欲望都市』プロジェクトは、まだ始まったばかりだ。これから、私たちは、さらに深く、東京の裏側に潜り込んでいくことになるだろう。そして、そこで出会う人々の声に耳を傾け、その物語を記録していく。

数週間後、『欲望都市』は完成した。八時間にも及ぶ映像は、衝撃的な内容を含んでおり、一部から批判も出た。しかし、多くの人々は、この作品を通して、都市の裏側に存在する問題に目を向け、議論を始めた。

私は、佐竹と共に、街頭インタビューを行った。インタビューに答えてくれた人々は、皆、様々な意見を持っていた。都市伝説を信じている人もいれば、信じていない人もいた。しかし、誰もが、都市に潜む欲望の存在を否定することはできなかった。

ある女性は、涙ながらに語った。「私は、かつて、闇風俗で働いていたことがあります。毎日が、地獄のような日々でした。でも、生きていくためには、そうするしかなかったんです。」

ある男性は、興奮した口調で語った。「俺は、○撮マニアじゃないけど、気持ちはわかる。だって、人間だもん。誰だって、エッチなこと考えてるよ。」

そして、ある老人は、静かに語った。「昔は、もっとおおらかだった。恥じらいもあった。でも、今は、誰もが、欲望を隠そうともしない。それは、良いことなのか、悪いことなのか、私にはわからない。」

『欲望都市』は、都市の裏側を暴き出した。しかし、それだけではない。この作品は、私たちに、人間の欲望とは何か、そして、都市とは何かを、改めて問いかけている。

私は、これからも、佐竹と共に、都市の裏側を追いかけていく。そこで出会う人々の声に耳を傾け、その物語を記録していく。そして、いつか、この『欲望都市』が、都市を変える力になることを信じている。

そして、佐竹は、次の調査へと向かう。彼は、東京のアンダーグラウンドに、深く根を張った闇を、今日も追い続けるだろう。彼の背中には、常に、都市の光と影が、入り混じって映し出されている。

（了）