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空は鉛色で、冷たい雨が窓を叩いていた。みづきは、彼氏である翔太の腕に寄り添い、宏行の家の門扉の前に立っていた。宏行は、彼らが通う桜ヶ丘高校の同級生で、数ヶ月前から登校拒否を続けている。真面目なみづきは、担任の先生から宏行を心配する親に代わって説得を頼まれたのだ。

「大丈夫かな、みづき…」翔太は、みづきの手を優しく握った。彼の顔には、不安が滲んでいた。宏行の家は、駅から離れた静かな住宅街の一角にあり、古びた門構えは、住人の内面を反映しているようにみえた。

インターホンを押すと、しばらくして、重々しい足音が聞こえ、ドアが開いた。そこに立っていたのは、宏行の父親、健太だった。予想していたよりもずっと若い、しかし疲れた顔をした男だった。

「…みづきさん、翔太くんでしょうか。宏行の友達ですね。どうぞ、中へ」

健太の声は低く、どこかぎこちなかった。室内は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。居間には、乱雑に置かれた家具と、空になった酒瓶が散乱していた。宏行の姿はなかった。

「宏行は…？」みづきは、震える声で尋ねた。

「今は…部屋にいます。少し疲れているようなので…」健太は言葉を濁した。その様子に、みづきは不審感を抱いた。宏行の親に連絡した際、母親は入院中で、父親が一人で面倒を見ていると聞いていたが、この家の様子は、単なる疲弊の域を超えていた。

健太は、みづき達に紅茶を出し、宏行のことを話し始めた。学校に行けない理由、友達との関係、そして自分自身の後悔…。健太の話は、次第に宏行への同情から、自分自身の暗い過去へと移り変わっていった。

「俺も…若い頃は、ろくでもないことをしていたんだ。だから宏行には、そんな道を歩んでほしくない。君たちのように、真面目に生きてほしい…」

健太は、涙ぐみながら言った。その言葉は、みづきの心を打った。しかし、彼の目には、どこか異様な光が宿っていた。

それから数時間、みづきは翔太と共に、健太の話を聞いていた。宏行は部屋から出てこなかった。時折、室内から物音が聞こえたが、健太はそれを無視した。夜になり、空腹を覚えたみづきは、健太に食事を頼んだが、彼は「冷蔵庫にあるものを自由に食べていい」とだけ言い、キッチンへは案内しなかった。

キッチンで食材を探していると、みづきは、地下室へと続く階段を発見した。階段を降りると、そこは薄暗く、湿った空気が充満していた。そして、そこで彼女は恐ろしい光景を目撃する。

地下室には、数人の男たちがおり、麻薬らしきものを吸っていた。男たちは、みづき達とほぼ同年代の若い男たちで、その表情は凶暴で、冷酷だった。そして、そこには、椅子に縛り付けられた宏行がいた。

「…これは…」みづきは言葉を失った。翔太も、恐怖で硬直していた。

健太は、地下室に現れ、邪悪な笑みを浮かべた。

「君たちを、ここに呼んだのは…宏行のためじゃない。俺たちの…遊び相手としてな」

健太は、男たちに合図をした。男たちは、みづきに襲い掛かった。みづきは必死に抵抗したが、力の差は歴然としていた。翔太も抵抗しようとしたが、男たちに制圧された。

みづきは、その麗しい身体を蹂躙された。悲鳴を上げても、誰も助けには来ない。彼女は、絶望の中で、ただ、涙を流すことしかできなかった。

朝が来たとき、みづきはボロボロの状態だった。体は傷だらけで、心は深く傷ついていた。翔太も、同様にひどい目に遭っていた。宏行は、依然として地下室の隅でうずくまっていた。

みづきは、その後、警察に助けを求め、健太とその仲間は逮捕された。しかし、彼女の心に刻まれた傷は、決して消えることはなかった。優等生だったみづきは、この事件によって、人生の暗い側面を突きつけられたのだ。そして、宏行もまた、二度と元の生活には戻れそうにない傷を負っていた。雨は、やみ続けていた。