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編集室の蛍光灯が、ミネックの顔を蒼白く照らしていた。午後３時。締め切りは迫り、原稿の山は一向に減る気配を見せない。そんな時、電話が鳴った。

「もしもし…ミネックさんですか？あの…出演希望で電話しました…」

か細く、少し震えた声。聞き慣れない関西弁だった。神戸からの電話らしい。上京中で、近くのホテルに滞在中だと言う。出演希望？ミネックは編集者だ。テレビ番組の企画を練ったり、原稿を校正したりするのが仕事だ。出演希望とは、どういうことだ？

しかし、その声には奇妙な魅力があった。好奇心がミネックを駆り立てた。

「…どういう番組ですか？」

「えっと…あの…具体的な企画はまだないんですけど…どうしてもミネックさんに…お会いしたくて…」

相手は言葉を詰まらせる。何かを隠しているようだ。ミネックは不審に思いながらも、彼女の言葉に引かれる自分がいた。編集作業は中断だ。

ホテルへ向かう車中で、ミネックは鞄の中に小さな箱を忍ばせた。非常時用の、と自分に言い聞かせながら。

ホテルの部屋は、予想以上に清潔で上品だった。窓からは、東京の街並みが一望できた。そして、そこにいたのは、想像をはるかに超える女性だった。

優子先生。三十代前半だろうか。端正な顔立ち、知的な雰囲気を漂わせる女性は、現役の中学教師だという。生徒の対応に疲弊し、ストレスを発散したい、と彼女は言った。

「生徒たちが…全く言うことを聞いてくれなくて…最近は、夜も眠れません…」

優子先生は、目を潤ませながら、そう打ち明けた。上品なワンピースの下には、透けるような下着が透けて見える。その下着は、既に湿り気を帯び、彼女の興奮を物語っていた。

ミネックは、言葉を失った。想像していた“ストレス発散”とは、全く違ったものだった。これは、ただのエッチな話ではない。優子先生は、深い心の闇を抱えていたのだ。

ミネックは、彼女が求めているものを理解した。それは、単なる肉体的な満足ではない。誰にも打ち明けられない悩み、抑圧された感情を解放する場、そして、許される場所。

ミネックは、淫具を取り出さなかった。代わりに、静かに彼女の言葉を聞いた。優子先生は、涙を流しながら、生徒との様々な出来事を語り始めた。反抗的な生徒、理解のない保護者、学校側の無理解…彼女が抱えていたストレスは、想像をはるかに超えるものだった。

話を聞き終えたミネックは、ゆっくりと優子先生に近づいた。そして、そっと彼女の手に触れた。それは、慰めであり、共感の表れだった。

「大丈夫ですよ…」

ミネックは、優しく囁いた。

その夜、二人は何もせず、ただ語り合った。優子先生の心の傷を癒すことは、ミネックにはできない。しかし、彼女が一人ではない、ということを伝えることができた。

朝、優子先生は、少し落ち着いた表情でホテルを後にした。彼女は、以前とは違う輝きを放っていた。

ミネックは、編集室に戻り、残りの原稿に向かった。昨日の出来事は、彼の心に深く刻まれた。それは、単なる性的な体験ではなく、人間同士の深い触れ合いだった。そして、その経験は、彼の編集者としての仕事に、新たな視点をもたらすだろうとミネックは感じた。

ミネックは、その日の出来事を小説に書き綴ることを決意した。それは、性的な描写だけの物語ではなく、現代社会が抱える問題、そして、人間が抱える心の闇を繊細に描いた、深い感動を呼ぶ物語になるだろうと。それは、優子先生への、そして、社会への、ミネックからのメッセージだった。  それは、決して簡単に「淫乱女教師」と括ることのできない、複雑で、そして美しい物語になるだろうと。