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夏の夕暮れ。蝉の声がやかましいベランダで、僕は友人の翔太に打ち明けた。「…実はさ、まだ童貞なんだ」

翔太は、いつも派手なシャツを着こなし、夜の街で女性を口説き落とすのが趣味の男だ。そんな彼に相談するなんて、自分でも信じられないくらい恥ずかしかった。しかし、もう限界だった。22歳にして、未だに女性に触れたことさえない。この焦燥感から解放されたい。そんな思いが、僕を翔太へと駆り立てたのだ。

予想通り、翔太は爆笑した。「おいおい、マジでかよ！大丈夫、任せておけ！」彼はそう言うと、スマホを取り出し誰かに電話をかけ始めた。どうやら、誰かを呼び出しているらしい。

それから30分後、インターホンが鳴った。ドアを開けると、そこに立っていたのは、想像をはるかに超える人物だった。細身の体格、大きな丸眼鏡、そして控えめな服装。まるで、アニメに出てくるような、典型的な「地味メガネ女子」だった。名前は、美咲。翔太の説明によると、近所のカフェでアルバイトをしているらしい。

「…えっと、はじめまして」美咲は小さく声に出し、視線を泳がせていた。まるで、捕まってしまった小動物のようだった。

翔太は、僕の部屋に美咲を招き入れると、ニヤニヤしながら言った。「よし、まずは俺がどんな感じの子か、君に調べておいてもらう。その後、こいつに会わせるからな！」

美咲は、翔太の言葉に少し驚いた様子だったが、素直に頷いた。彼女は部屋の中をきょろきょろと見回し、その後、静かにソファに座った。まるで、自分がどこにいるのか、まだよく理解できていないようだった。

翔太は、まるで自分の獲物を紹介するハンターのように、得意げに美咲のプロフィールを説明し始めた。意外にも彼女は、読書家で、クラシック音楽が好きで、将来は図書館司書になりたいという夢を持っているらしい。

数時間後、翔太は美咲を僕の部屋に案内し、そして衝撃的な行動に出た。なんと、彼は僕の目の前で、服を脱ぎ始めたのだ。

「ちょっと待ってよ！」僕は慌てて叫んだ。

翔太は、まるで何もなかったかのように、セクシーな下着姿になって、美咲の隣に座った。「ほら、見てみろよ。こんな奴が童貞だって信じられるか？  美咲ちゃん、彼、ちゃんと指導してやってくれよ！」

美咲は、翔太の行動に驚きを隠せない表情をしていたが、すぐに冷静さを取り戻した。彼女は深呼吸をし、翔太に視線を向けた。

「翔太さん…ちょっと、落ち着いてください。まず、彼は私に何を求めているんですか？」

美咲の落ち着いた口調に、翔太も少しだけ落ち着きを取り戻したようだ。「いや、つまりさ…このヤツ、全くの初心者でさ。だから、女の子とどう接したらいいか、教えてもらいたいんだ」

美咲は、ゆっくりと、しかし丁寧に、僕に女性との接し方、女性の気持ちの理解の仕方、そして、恋愛における基本的なマナーなどを教えてくれた。彼女の言葉は、優しく、そして誠実だった。

「男性は、女性を理解しようとすることが大切です。女性の言葉の裏に隠された気持ち、女性の行動の背景にある事情…そういうことを考え、尊重することが、良好な関係を築くために必要だと思います」

美咲は、具体的な事例を挙げながら、丁寧に説明してくれた。彼女の言葉は、教科書のような硬さではなく、温かさと優しさに満ち溢れていた。

翔太は、最初は冗談半分だったのかもしれないが、美咲の真剣な説明を聞きながら、次第に真剣な表情になっていった。まるで、初めて女性の本音を理解したかのような表情だった。

その日は、結局、特に何も起こらなかった。しかし、美咲との会話を通じて、僕は初めて女性を理解しようとすることの大切さを知った。そして、翔太もまた、自分の行動を改めて見つめ直す良い機会になったようだ。

次の日、翔太は少し照れくさそうに僕に言った。「すまなかった。昨日のは、ちょっとやりすぎだったな。でも、美咲のおかげで、少しは変わった気がするよ」

僕は、美咲に感謝の気持ちを伝え、そして、彼女とのゆっくりとした関係を築いていこうと思った。童貞卒業という目標は、今となってはそれほど重要ではなくなっていた。大切なのは、女性との良好な関係を築くこと、そして、お互いを尊重し合うことだと、僕はその時初めて理解したのだ。  翔太と美咲の助力により、僕は本当の恋愛の始まりを経験したのだった。  その夜、僕は今まで感じたことのない、温かい安らぎを感じて眠りについた。