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廃墟と化した保養施設「白鳥荘」は、露出マニアの間では聖地とされていた。朽ち果てた建物、鬱蒼と茂る雑木林、そして何よりも、人知れず集まる覗き屋たちの存在が、その名を不名誉なまでに有名にしたのだ。

真帆（まほ）は、20歳。彼氏がいるものの、彼には決して打ち明けられない、隠された欲望を抱えていた。それは、見知らぬ男たちに自分の裸を見られること、そしてその視線に身を委ねることへの渇望だった。インターネットの片隅で出会った「覗き屋募集」の書き込みに、彼女はすぐに心を奪われた。匿名性のベールに隠された、危険で刺激的な世界。その背徳感に、彼女は抗うことができなかった。

約束の日の午後、真帆は古びたセダンに乗り込んだ。運転席には、五十代半ばの男性、佐藤が座っていた。佐藤はサイト上で「老眼鏡」というIDを使っていた。プロフィールには、寡黙で経験豊富だと書かれており、真帆は彼を信頼、というよりは、彼の存在に安心感すら覚えていた。

白鳥荘への道中、佐藤はほとんど言葉を交わさなかった。真帆は緊張と興奮で、窓の外の景色をぼんやりと眺めていた。かつて栄華を誇ったであろう施設は、今や廃墟と化し、いたるところに落書きや破壊の跡が残されていた。それでも、真帆は、この場所の持つ独特の雰囲気に、奇妙な高揚感を覚えた。

白鳥荘の敷地内には、既に数台の車が停まっていた。佐藤は、真帆に何も言わずに、廃墟の一角に車を停めた。そこには、草むらに隠れるように、数人の男たちが潜んでいた。彼らの姿は、薄暗がりの中で、影のように曖昧だった。

佐藤が真帆に言った。「ここにいる連中は、皆、この場所の常連だ。覚悟はできてるな？」

真帆は、震える声でうなずいた。想像していたよりもはるかに多くの視線を感じ、恐怖と興奮が入り混じった感情が、全身を駆け巡った。

佐藤は、真帆を建物の裏手、荒れ果てた庭園へと連れて行った。そこには、崩れかけた石造りの噴水があり、その周辺には、男たちが三々五々、隠れるようにして待ち構えていた。彼らの年齢は様々で、若い男から老齢の男まで、様々なタイプの人間がいた。彼らは皆、真帆の出現を待ち構えていたのだ。

真帆は、佐藤に促されるまま、ゆっくりと服を脱ぎ始めた。最初は震える手で、戸惑いながらだった。しかし、徐々に、周囲から向けられる熱い視線、そして、その視線に含まれた欲望を感じ取るにつれ、真帆は奇妙な快感に包まれていった。

男たちの視線は、欲望に満ち溢れ、時には露骨で、時には陰険で、時には憐れみを帯びていた。真帆は、それぞれの視線の違いを、自分の肌で感じ取っていた。それは、彼女にとって、新しい体験であり、新たな快楽の源泉でもあった。

彼女が全裸になると、男たちは一斉に動き出した。中には、カメラを構えて撮影する者もいれば、ただひたすらに真帆の身体を凝視する者もいた。真帆は、彼らの視線の洪水に、溺れるような感覚を覚えた。

しかし、その中には、真帆の想像を超えるものも含まれていた。一部の男たちは、過激な行動に出始めたのだ。叫び声を上げる者、性的暴行を企てる者、中には、明らかに精神的に不安定な者もいた。真帆は、恐怖とパニックに襲われた。これは、彼女が望んでいたものとは、全く違ったものだった。

佐藤は、その様子を冷静に観察していた。彼は、まるで、この状況全体をコントロールしているかのように、時に男たちを制止し、時に彼らを煽動していた。彼は、この場所の支配者、そしてこの狂騒劇の演出家だったのだ。

真帆は、必死に抵抗しようとしたが、多勢に無勢。彼女は、その場を逃げ出すことすら、不可能だと悟った。彼女は、恐怖と絶望に打ちひしがれ、ただただ、男たちの視線と行動に身を任せるしかなかった。

その夜、真帆は白鳥荘を生きて脱出した。しかし、彼女の心には、消せない傷が残った。それは、肉体的な傷ではなく、精神的な深い傷だった。彼女は、自分が体験したことを、誰にも話すことができないまま、孤独の中で、その記憶と戦い続けることになった。白鳥荘の影は、彼女の未来を永遠に覆い隠すことになるだろう。そして、その場所には、今日もなお、飢えた覗き屋たちが集まり続けるのだった。