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アスファルトの熱気が、少女の白い肌にまとわりついた。夕焼けが空を焦がすように染め上げ、街の喧騒が、遠くで打ち寄せる波のように聞こえた。十七歳になる凛子は、薄紫のワンピースを着て、街角に一人立っていた。風は、彼女の長い黒髪を優しく撫で、しかし、その心は嵐の前の静けさのように、不安でいっぱいだった。

凛子は、決して派手な少女ではなかった。むしろ、地味で目立たない存在だった。高校では成績優秀で、誰からも好かれる存在ではあったが、深い交友関係を持っていたわけではなかった。内向的な性格で、自分の気持ちを素直に表現することも苦手だった。だからこそ、あの男、声をかけた男、五十歳は優に超えているであろうその男の言葉に、簡単に流されてしまったのだ。

「ちょっと話があるんだ。君、綺麗だね」

男の言葉は、油ぎったもので、凛子の耳に不快感を残した。しかし、男の目は、何かを企んでいるような、鋭い光を放っていた。凛子は断る言葉を探したが、見つからなかった。なぜなら、彼女は、自分が何を求めているのか、分からなくなっていたのだ。

孤独。それは、凛子の心を蝕む、根深い闇だった。両親は、彼女が幼い頃に離婚し、それぞれ新しい家庭を築いた。凛子は祖父母に育てられたが、祖父母も高齢になり、最近は凛子のことをあまり気にしていないように感じていた。友達も、多くはなかった。誰にも相談できない悩みを抱え、彼女は、心の中で孤独と闘っていた。

男は、凛子を誘導するように、静かな路地へと導いていった。路地は、薄暗く、不気味な雰囲気を漂わせていた。凛子は、背筋が凍るような寒さを感じた。男の言葉には、最初は好意を感じたが、路地に入ると、その言葉に嘘が混じっていることに気づいた。

路地の奥には、廃墟のような建物があった。建物からは、かすかな音楽と、男たちの笑い声が聞こえてきた。その音は、凛子の心臓を締め付けるように、恐怖を呼び起こした。建物の中へ足を踏み入れると、そこは、想像をはるかに超える光景が広がっていた。

薄暗い部屋には、男たちが数人集まっていた。男たちは、全員が凶悪そうな顔つきで、凛子を一目見ただけで、彼女の怯えを嘲笑うように、不気味な笑みを浮かべた。部屋の空気が、重苦しく、淀んでいた。

「お、来たか。紹介しよう。今日のゲストだ」

男は、凛子を男たちの前に突き出した。凛子は、震える手でワンピースの裾を握りしめ、涙がこぼれそうになった。男たちは、欲望に満ちた目で、凛子を見つめていた。

「君が、ここにいる理由は？」

男の一人が、冷酷な声で尋ねた。凛子は、言葉が出なかった。何を言えばいいのか分からなかった。なぜ、ここに来たのか、自分自身も理解できなかった。

男たちの行動は、想像を絶するものであった。言葉では言い表せないほどの暴力と屈辱が、凛子の身に降りかかった。少女は、ただただ震え、泣き叫ぶことしかできなかった。

夜が更け、朝が来た。凛子は、廃墟から一人、逃れるようにして出てきた。体は痛むし、心は壊れそうだった。しかし、彼女は、生き延びた。

街の光が、彼女の顔を照らした。凛子は、自分の足で、一歩ずつ、前へと歩みを進めた。あの廃墟で何が起こったのか、誰にも言えない。言いたくない。それでも、彼女は、生きなければならない。あの場所で、なぜ、佇んでいたのか。それは、彼女自身にも、まだわからない。しかし、この経験を乗り越えて、いつか、自分自身を理解できる日が来ることを、祈るように、彼女は歩み続けた。あの薄紫のワンピースは、汚れ、破れ、もう着ることはできないだろう。それでも、そのワンピースは、彼女の人生における、決して消えることのない、深い傷痕として、彼女の心に刻まれた。