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物語の舞台は、東京郊外の小さなデザイン会社。主人公の僕は、28歳。将来への不安を抱えながらも、真面目に仕事に取り組む毎日を送っていた。上司である梅崎めい（33歳）は、仕事はできるものの、プライベートでは彼氏もおらず、結婚の予定もないいわゆる「行き遅れ」と、社内ではささやかれていた。めいは、誰に対しても気さくで明るい女性だったが、その裏に隠された孤独を、僕は時折感じていた。

ある金曜日の夜、会社の飲み会で、いつものようにめいは陽気に酒を飲んでいた。その日は、僕がめいに好意を抱いていることを悟られないように、気兼ねなく話せるようにと、少し距離を置いていた。しかし、めいは、その日の気分が良かったのか、普段以上に饒舌で、仕事のこと、将来のこと、そして少しだけ、自身の恋愛事情について話してくれた。その言葉の端々から、彼女が本当は結婚を望んでいること、焦りや不安を抱えていることが伝わってきた。

飲み会が終わる頃には、めいはかなり酔っていた。送りがてら、タクシーに乗せようとした時、めいは突然、「ちょっと、一杯だけ、一緒にいかがですか？」と誘ってきた。僕は戸惑った。上司であり、女性としてのめいを意識していたので、簡単に誘いに乗るべきではないと分かっていた。しかし、彼女の酔い方、そして彼女の寂しげな表情を見て、つい、「いいですよ」と答えてしまった。

静かなバーで、めいはさらに酒を飲み、今まで話せなかったことを打ち明けるように話し始めた。幼い頃に両親が離婚したことで、安定した家庭に憧れ、理想の結婚を夢見てきたこと。しかし、理想と現実のギャップに苦しみ、年齢を重ねるごとに焦りが募っていること。そして、最近の仕事でのストレスや、将来への不安を吐露した。

僕には、めいの言葉が胸に突き刺さった。彼女を慰め、励ましたくなった。そして、気が付くと、僕はめいの手を取り、彼女の言葉を遮るようにキスをした。それは、酔い、そして同情、そして、抑えきれなかった、どうしようもない衝動から生まれた行為だった。

バーを出た後、めいのマンションへと向かった。その行為は、間違いだと分かっていた。結婚間近の彼女がいる僕にとって、許される行為ではなかった。それでも、止められなかった。めいのマンションのベッドの上で、我々は情熱的に絡み合った。めいは、予想以上に積極的で、僕の身体を大胆に弄んだ。その経験は、僕にとって、初めての大人としての性体験だった。

後で、めいはそれを後悔したと、僕に打ち明けた。彼女は、酔った勢いで、本来の自分を抑えきれなかったと。彼女は、僕の彼女ではない、結婚間近の他の女性がいることを知っていた。彼女の言葉には、自分を責める気持ちと、僕へのわずかな愛情が混ざっていた。

その出来事の後、僕たちは、お互いの気持ちを確かめ合うことなく、いつものように仕事をした。しかし、空気は変わった。以前のような自然な関係は、失われてしまった。めいは、僕を避けるようなそぶりを見せることもあったが、それでも、時折、意味深な視線を向けてくることもあった。

僕は、自分の行為を後悔した。しかし、同時に、めいとのあの夜の出来事、彼女の抱擁、彼女の温もり、全てが忘れられなかった。あの夜、僕はめいの心の奥にある孤独に触れた。そして、その孤独を少しだけ、埋められたのかもしれない、と、複雑な思いを抱いた。それから数年後、僕は、めでたく結婚した。しかし、めいとのあの夜のことは、僕の心にずっと残っている。それは、決して忘れられない、一つの過ちであり、同時に、一つの記憶として。

その後、めいは転職をし、消息を絶った。僕は時折、彼女のことを思い出し、あの夜の出来事を反芻する。あの時、もしも違う選択をしていたら、今の僕はどうなっていただろうか。あの夜、僕は何を得て、何を失ったのだろうか。その答えは、きっと、永遠に分からないだろう。