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## 虚無の楽園

ネオンが洪水のように降り注ぐ歌舞伎町の裏通り。その一角に、ひっそりと佇む「エデン」という看板が、虚ろな光を放っていた。男は、その看板をしばらく見上げていた。黒ずくめのスーツに身を包み、顔には疲労の色が濃く滲んでいる。名は、佐竹。IT企業で管理職を務める彼は、連日の残業とプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。

「エデン」…楽園か。今の自分にとって、ここは楽園たり得るのだろうか。自嘲気味に笑いながら、佐竹は重い足取りで店の扉を開けた。

店内は、外の喧騒とは別世界だった。薄暗い照明が心地よく、アロマの香りが鼻腔をくすぐる。受付には、妖艶な微笑みを浮かべた女性が座っていた。

「いらっしゃいませ、佐竹様。お待ちしておりました」

女性は、佐竹の名前を知っていた。予約していたのだ。彼女の言葉に導かれるように、佐竹は奥へと進んでいった。

通されたのは、豪華な個室だった。漆黒の壁に囲まれた空間には、天蓋付きのベッドが鎮座している。ベッドの上には、シルクのような光沢を放つシーツが敷かれ、高級感が漂っていた。

「こちらでお待ちください。担当の者がすぐに参ります」

女性はそう言い残し、部屋を出て行った。佐竹は、ベッドに腰を下ろした。ふかふかの感触が、わずかに心を癒してくれる。

しばらくすると、扉が開いた。現れたのは、息をのむほど美しい女性だった。黒髪が肩まで伸び、透き通るような白い肌は、まるで陶器のようだ。彼女は、佐竹に優雅な微笑みを向けた。

「初めまして、佐竹様。本日は、私が担当させていただきます、リサと申します」

リサと名乗る女性は、丁寧に頭を下げた。佐竹は、彼女の美しさに圧倒され、言葉を失った。

「どうぞ、おくつろぎください」

リサは、柔らかな声で言った。そして、佐竹に温かいお茶を勧めた。

お茶を飲みながら、リサは佐竹に、今日のコースについて説明を始めた。彼女が語るのは、「KMP」と称される、エデン独自のマットプレイだった。男の身体を知り尽くした女性が、様々な技を駆使して、極上の快楽を提供するという。

佐竹は、半信半疑だった。過去にも、似たような店に行ったことはある。しかし、どこか形式的で、心から満足できたことはなかった。だが、リサの言葉には、どこか真実味が感じられた。

「佐竹様の疲れを、少しでも癒すことができれば、私は嬉しいです」

リサは、そう言って微笑んだ。その笑顔は、佐竹の心を優しく包み込むようだった。

覚悟を決めた佐竹は、リサの言葉に従い、バスローブを羽織った。リサは、慣れた手つきでバスルームへと案内した。

バスルームは、広々としており、ジェットバスが設置されていた。リサは、湯加減を確認しながら、佐竹を湯船へと誘った。

温かい湯に浸かると、佐竹の身体から緊張が解けていくのがわかった。リサは、優しく佐竹の身体を洗い始めた。その手つきは、丁寧で繊細だった。

リサの指先が、佐竹の首筋を滑り、肩へと流れていく。その心地よさに、佐竹は思わず息をのんだ。彼女は、佐竹の身体の隅々まで、丁寧に洗い上げた。

湯から上がると、リサは佐竹をベッドへと案内した。ベッドの上には、温められたタオルが用意されていた。リサは、そのタオルで佐竹の身体を優しく拭き始めた。

「これから、マットプレイを始めさせていただきます」

リサは、そう言って微笑んだ。彼女は、佐竹の身体に、たっぷりとローションを塗り始めた。そのローションは、ほのかに甘い香りがした。

リサの指先が、佐竹の身体を滑り始めた。その感触は、まるで電流が走るかのようだった。彼女は、佐竹の身体の弱い場所を、熟知しているかのようだった。

リサは、様々なマットプレイを繰り出した。千流下り、座り千流下り、桃洗い、壺洗い…。その一つ一つが、佐竹の感覚を刺激し、快楽へと導いていく。

「あぁ…！！もうこんなに責められたら我慢できない！！」

佐竹は、思わず声を上げた。リサのテクニックは、まさに絶頂だった。彼女は、佐竹の性欲を最大限まで引き出し、極限まで高めていく。

佐竹は、リサの動きに身を任せ、快楽の波に溺れていった。彼は、彼女の腕の中で、すべての煩悩を忘れ、ただひたすらに快楽を貪った。

時間は、あっという間に過ぎた。佐竹は、深い眠りについていた。リサは、そんな佐竹を優しく見つめていた。

朝、佐竹は、爽やかな目覚めを迎えた。身体は軽く、気分は晴れやかだった。彼は、まるで生まれ変わったかのように感じた。

リサは、佐竹のために朝食を用意していた。温かいコーヒーと、焼きたてのパン。質素だが、心温まる朝食だった。

「昨日は、ありがとうございました」

佐竹は、リサに感謝の言葉を述べた。

「こちらこそ、ありがとうございました」

リサは、微笑みながら答えた。

佐竹は、エデンを後にした。歌舞伎町の喧騒が、再び彼を包み込む。しかし、佐竹の心は、昨日とは違っていた。彼は、希望に満ち溢れていた。

エデンは、佐竹にとって、まさに楽園だった。そこは、現実を忘れ、心の傷を癒す場所だった。そして、リサは、佐竹の心を救った天使だった。

佐竹は、再びエデンを訪れることを決意した。そして、リサに、もう一度会いたいと願った。

しかし、彼はまだ知らない。エデンの真実を。そして、リサの隠された過去を。

エデンは、本当に楽園なのだろうか。それとも、虚無の淵なのだろうか。佐竹の物語は、まだ始まったばかりだ。