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## タイトル：黄昏色の誘惑

夕焼けが茜色に染める頃、みどり（52歳）はいつものように駅前のカフェテラスでアイスコーヒーを啜っていた。パート帰りのルーティン。主婦業の合間の、ほんのひとときの休息。

「お綺麗ですね。まるで夕焼けの女神のようだ」

聞き慣れない甘い声に、みどりは驚いて顔を上げた。そこに立っていたのは、三十路手前くらいの若い男。整った顔立ちに、少しばかりチャラい雰囲気。ナンパだ、とすぐに分かった。

「…何を言ってるの。もうそんな歳じゃないわよ」

みどりは内心ドキドキしながらも、平静を装って答えた。ナンパなんて、もう何十年も経験していない。若い頃は毎日のようにあったのに。いつの間にか、そんな言葉をかけられることすらなくなった。

「歳なんて関係ありません。その美しい瞳に、僕は心を奪われたんです」

男はそう言うと、迷うことなくみどりの向かいの席に腰掛けた。その大胆さに、みどりはますます戸惑う。彼は一体、何を考えているのだろう。

男は自己紹介した。名前はユウト。フリーランスでカメラマンをしているらしい。みどりのことを「ミドリさん」と呼び、敬意を払いながらも親しげに話しかけてくる。

「ミドリさんは、すごく魅力的な方ですね。大人の女性の余裕と、少女のような可愛らしさを持ち合わせている」

そんな言葉を、みどりはもう長い間聞いていなかった。夫は、もう何年も彼女を「お母さん」としか呼ばない。子供たちは独立し、家を出て行った。彼女はいつしか、一人の女性であることを忘れかけていた。

「…そんなこと、ないわよ」

みどりは照れ隠しのように呟いた。ユウトは、そんなみどりの反応が可愛いらしくてたまらない、というように微笑んだ。

「そんなこと、あります。僕は嘘はつきません。ミドリさんと、もっとお話がしたい。今度、お食事でもご一緒しませんか？」

みどりの心臓は、まるで若い頃のように高鳴った。食事、デート。そんな言葉は、彼女の人生にはもう存在しないものだと思っていた。しかし、ユウトは真剣な眼差しで彼女を見つめている。

「…考えてもいいかしら」

みどりはそう答えるのが精一杯だった。ユウトは満足そうに頷き、連絡先を交換して別れた。

家に帰ると、みどりは鏡の前で自分の姿をじっくりと見つめた。シミ、シワ、白髪…。年老いた自分の姿がそこにはあった。本当に、こんな自分に魅力があるのだろうか。

しかし、ユウトの言葉が彼女の心を揺さぶる。女神、美しい瞳、大人の余裕、少女のような可愛らしさ…。そんな言葉をかけられたのは、一体いつぶりだろうか。

数日後、みどりはユウトからの誘いを承諾した。選んだのは、少しばかり高級なイタリアンレストラン。久しぶりにワンピースを着て、少しだけメイクを濃くした。

レストランでユウトは、花束を持って待っていた。そんなサプライズに、みどりは胸を熱くする。彼は、まるで映画に出てくるロマンチックな恋人のようだった。

食事中、ユウトはみどりの話に熱心に耳を傾けた。子供たちのこと、仕事のこと、趣味のこと。彼はどんな話題にも興味を示し、みどりの言葉を引き出していく。

「ミドリさんの話を聞いていると、すごく刺激を受けます。僕はまだまだ子供ですね」

そんな言葉に、みどりは優越感を感じた。若い男に頼られる、そんな感覚は久しぶりだった。

食事が終わり、ユウトはみどりを夜景の見えるバーに連れて行った。煌びやかな夜景をバックに、二人はグラスを傾けながら語り合った。

「ミドリさん、僕はあなたに惹かれています。年齢なんて関係ありません。あなたの内面の美しさに、僕は心を奪われたんです」

ユウトはそう言うと、みどりの手をそっと握った。その温かさに、みどりの体は熱くなった。

「…でも、私はもう歳だし」

みどりは、最後の抵抗を試みた。しかし、ユウトは力強く首を振った。

「歳なんて関係ありません。僕は、今のミドリさんが好きなんです」

ユウトはそう言うと、みどりの頬に手を添え、優しくキスをした。その瞬間、みどりの体は痺れたように感じた。理性は崩壊し、本能が顔を出す。

それからのことは、ほとんど覚えていない。気づけば、みどりはユウトとホテルにいた。

「ミドリさん、綺麗だ」

ユウトはそう言いながら、みどりの服をゆっくりと脱がせていく。久しぶりに感じる男性の視線に、みどりは恥じらいながらも、興奮を抑えきれない。

ユウトは、みどりの体を丁寧に愛撫した。指先が触れるたびに、みどりの体は熱くなる。若い頃のような激しい刺激はない。しかし、ゆっくりと、丁寧に愛されることに、みどりは新たな喜びを感じた。

「あ…、ユウト…」

みどりは、我慢できずに声を漏らした。ユウトは、そんなみどりの姿を見て、満足そうに微笑んだ。そして、彼はみどりの奥へと深く入り込んでいった。

その夜、みどりは久しぶりに心の底から満たされた。若い男との情事。それは、彼女の人生に新たな光を灯してくれた。

翌朝、みどりはユウトに別れを告げた。一夜限りの関係。それが、お互いにとって一番良い選択だと分かっていた。

家に戻ると、みどりは再び鏡の前に立った。そこに映っていたのは、昨日とは違う自分だった。顔には、かすかに紅潮が残り、瞳には輝きが宿っていた。

「…悪くないわね」

みどりはそう呟くと、微笑んだ。彼女は、もう一度恋にときめくことができた。たとえそれが、一夜限りの夢だとしても。

みどりは、再び日常に戻っていった。パートの仕事、主婦業。しかし、彼女の心には、ユウトとの夜の記憶が鮮やかに残っていた。

時々、みどりはカフェテラスでアイスコーヒーを啜りながら、ユウトのことを思い出す。彼は今、どこで何をしているのだろうか。

もしかしたら、彼はまた別の熟女を誘惑しているかもしれない。しかし、それでも構わない。みどりは、彼との出会いに感謝している。彼は、彼女に女性としての自信を取り戻させてくれたのだから。

そして、みどりは決意した。これから、もっと自分を大切にしよう。もっと綺麗になろう。もっと人生を楽しもう。

夕焼けは、今日も茜色に染まっている。みどりは、その美しい光景を眺めながら、新たな一歩を踏み出した。彼女の心は、再び輝き始めたのだ。