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## 街角の宝石

雨上がりの夕暮れ、アスファルトが街灯を反射してキラキラと輝く中、私は駅前のカフェでいつものブラックコーヒーを啜っていた。窓の外をぼんやりと眺めていると、ひときわ目を引く女性が目に飛び込んできた。

白いワンピースに身を包み、長い黒髪を風になびかせながら歩く彼女は、まさに街角に咲く一輪の白い百合のようだった。控えめな微笑みを浮かべ、時折、ショーウィンドウに映る自分を恥ずかしそうに見つめる姿は、清らかで慎ましいという言葉がぴったりだった。

（まるで宝石みたいだ…）

そう思った瞬間、心の奥底に潜んでいた衝動が顔を出した。この美しさを、この清らかさを、少しだけ乱してみたい。まるで子供が悪戯心で、大切に飾られた花瓶にそっと触れてしまうような、そんな欲求が湧き上がってきた。

私はコーヒーを飲み干し、衝動に身を任せてカフェを飛び出した。彼女との距離を詰め、ゆっくりと歩調を合わせた。

「あの…すみません」

緊張で声が震えるのを抑えながら、声をかけた。彼女は驚いたように振り返り、大きな瞳を丸くした。

「はい…？」

その瞳は、まるで雨上がりの空のように澄み切っていた。

「あの…もしよろしければ、少しだけお話しませんか？ あなたの雰囲気に惹かれて…」

我ながら陳腐な言葉だと思った。しかし、彼女は警戒しながらも、少しだけ興味を持ったようだった。

「少しだけなら…」

私たちは近くの公園のベンチに腰掛け、ぎこちない会話を始めた。彼女の名前は美咲と言い、都内の小さな出版社で編集の仕事をしているらしい。趣味は読書と、週末のカフェ巡り。話せば話すほど、彼女の清らかさと慎ましさが伝わってきた。

美咲は、まるで傷つきやすいガラス細工のようだった。私は言葉を選ぶように、ゆっくりと、しかし確実に、彼女との距離を縮めていった。彼女の好きな作家の話、仕事で苦労していること、そして、少しだけ夢見がちな将来の話。

夕暮れが深まり、公園に人影がまばらになった頃、美咲は少しだけ打ち解けた様子を見せるようになった。時折、照れくさそうに微笑んだり、話に夢中になると身振り手振りが大きくなったり。そんな彼女の姿に、私はますます惹かれていった。

「あの…今日は、ありがとうございました」

美咲は立ち上がり、名残惜しそうに言った。

「いえ、こちらこそ。とても楽しい時間でした」

私は立ち上がり、彼女を見送ろうとした。しかし、どうしても抑えきれない衝動が、私を突き動かした。

「美咲さん…もし、迷惑でなければ、今度、食事でも行きませんか？」

彼女は少し戸惑った表情を浮かべた。そして、しばらく考え込んだ後、小さな声で言った。

「…いいですよ」

私は心の中で小さくガッツポーズをした。

その後、私たちは何度か食事に出かけるようになった。美咲は少しずつ心を開いてくれ、最初は遠慮がちだった会話も、次第に打ち解けたものになっていった。

ある夜、私たちは少し高級なイタリアンレストランで食事をしていた。美味しい料理とワインで、美咲は少し酔っていた。頬をほんのりと赤らめ、いつもより饒舌に話す彼女は、普段よりもずっと魅力的に見えた。

食事が終わり、店を出ると、外はすっかり暗くなっていた。私は美咲をタクシー乗り場まで送り、別れを告げようとした。

「あの…今日は、本当にありがとうございました。とても楽しかったです」

美咲は少し上気した顔で言った。

「こちらこそ。美咲さんと一緒だと、いつも時間が経つのが早く感じるんです」

私はそう言いながら、彼女の手をそっと握った。美咲は驚いたように私を見つめたが、抵抗する様子はなかった。

私は意を決して、彼女に顔を近づけた。美咲は目を閉じ、私の唇を受け入れた。それは、ほんの短いキスだったが、私にとっては永遠のように感じられた。

キスが終わると、美咲は恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「…あの、私、そろそろ帰ります」

彼女は小声でそう言うと、タクシーに乗り込んだ。私はタクシーを見送りながら、自分の衝動が、少しずつ形を変えていくのを感じていた。

それから数週間後、私たちは美咲の部屋で過ごしていた。映画を観たり、音楽を聴いたり、他愛もない話で笑い合ったり。時間はゆっくりと流れ、気がつけば、夜も更けていた。

美咲はソファでうたた寝をしていた。私はそっと彼女に近づき、その寝顔を見つめた。白い肌、長いまつげ、そして、薄く開いた唇。彼女の美しさは、まるで眠れる森の美女のようだった。

私はそっと彼女を抱き上げ、寝室に運んだ。ベッドに横たえ、毛布をかけると、彼女は小さく身じろぎをした。

私はベッドに腰掛け、美咲の手を握った。彼女の手は、温かく、そして柔らかかった。私は指先で彼女の手のひらをなぞり、ゆっくりと、そして優しく、愛撫した。

すると、美咲は小さくうめき声をあげ、目を覚ました。

「…ん…？」

彼女はぼんやりとした目で私を見つめた。

「ごめんね、起こしちゃった？」

私は優しく彼女の髪を撫でた。

「ううん…大丈夫」

美咲はそう言うと、私に寄り添ってきた。私は彼女を抱きしめ、その温かさを感じた。

「ねえ…」

美咲は少し躊躇いがちに言った。

「…あのね、私…」

彼女は言葉を詰まらせた。

「どうしたの？」

私は心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。

「…私、あなたのこと…」

彼女は顔を赤らめ、最後まで言葉を紡ぐことができなかった。しかし、私は彼女の気持ちが、痛いほど分かった。

私は彼女を優しく抱きしめ、その耳元で囁いた。

「僕もだよ、美咲さん」

そして、私たちはゆっくりと、お互いを求め合った。それは、衝動から始まった関係だったが、いつの間にか、愛に変わっていた。

朝、目が覚めると、美咲は隣で眠っていた。朝日が彼女の白い肌を照らし、まるで宝石のように輝いていた。私はそっと彼女の髪を撫で、静かに微笑んだ。

街で見かける宝石の如くキラキラ輝く清楚系なお姉さん。そんな出会いから始まった私たちの関係は、これからもゆっくりと、そして確実に、深まっていくのだろう。そして、私は彼女の清らかさと慎ましさを、大切に守りながら、共に生きていくことを誓った。