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## 団地の昼下がり

団地のチャリンコ置き場は、まるで戦場だ。少なくとも、俺、亮太にとっては。照りつける太陽の下、汗が額を伝う。今日は絶対に仕留めてやる。そう心に誓い、俺は錆び付いたママチャリに跨った。

ターゲットは、この大規模団地に住む若いママさんたち。雑誌の煽り文句みたいだが、あながち間違いではない。退屈な毎日、満たされない欲求。そんな彼女たちの隙間を縫うように、俺は言葉を紡ぐ。

この団地に引っ越してきて、早３ヶ月。最初はただの興味本位だった。しかし、何度か成功を重ねるうちに、これはもはやライフワークだと錯覚するようになった。

今日は、やけに暑い。日陰を探して、チャリンコ置き場の奥へと進む。と、その時。

いた。

白いワンピースを着た、清楚な雰囲気の女性。年の頃は20代後半だろうか。長い髪を一つに束ね、真剣な眼差しでチャイルドシートのベルトを締めている。子供は、まだ小さそうだ。

チャンスだ。

俺は、覚悟を決めた。息を整え、彼女に近づく。

「あの…すみません」

声をかけると、彼女は少し驚いたように顔を上げた。透き通るような白い肌、吸い込まれそうな大きな瞳。雑誌の煽り文句が脳裏をよぎる。まさか、こんな清楚な奥さんが…。

「はい、なんでしょうか？」

彼女の声は、想像以上に柔らかかった。

「あの…自転車のタイヤ、空気抜けてませんか？よかったら、空気入れ貸しましょうか？」

これが、俺の定番の切り出し方だ。些細なことだが、親切心を見せることで警戒心を解く。

彼女は、少し困ったようにタイヤを見た。

「あ、ほんとだ。ありがとうございます。でも、空気入れ持ってないんです」

「いえいえ、全然。すぐそこにあるんで、持ってきますよ」

俺は、急いで自分のチャリンコに戻り、空気入れを取り出した。

「ありがとうございます。助かります」

彼女は、申し訳なさそうに頭を下げた。

「いえ、どういたしまして。よかったら、空気入れながら少しお話でもしませんか？」

ここからが、本番だ。

彼女は、少し迷ったようだったが、小さく頷いた。

「…少しだけなら」

俺は、心の中でガッツポーズをした。

空気入れを手に、彼女の隣にしゃがみ込む。

「お子さん、可愛いですね。おいくつですか？」

「ありがとうございます。まだ1歳になったばかりなんです」

「1歳ですか！うちにも、同じくらいの歳の子供がいるんですよ」

嘘だ。俺に子供はいない。しかし、共通の話題を見つけることが、距離を縮める第一歩だ。

「そうなんですか！それは、奇遇ですね」

彼女は、少し表情を和らげた。

「この団地には、最近引っ越して来たんですか？」

「ええ、主人の転勤で。まだ、慣れなくて」

「そうなんですね。何か困ったことがあれば、いつでも言ってください。この団地のことなら、大体わかりますから」

「ありがとうございます。そう言っていただけると、心強いです」

空気を入れる手を止め、俺は彼女の顔をじっと見た。

「あの…もしよかったら、今度、うちで一緒にランチでもどうですか？うちの奥さんも、子育て中で退屈してると思うので」

これも、嘘だ。俺に奥さんはいない。

彼女は、少し戸惑ったように目を逸らした。

「…それは、ちょっと」

予想通りの反応だ。しかし、諦めるわけにはいかない。

「あ、もちろん、旦那さんも一緒に来てもいいんですよ。みんなで、楽しくお話しませんか？」

「…少し考えさせてください」

「はい、もちろんです。無理強いはしません。連絡先、交換しませんか？」

俺は、スマホを取り出し、連絡先交換の画面を開いた。

彼女は、少し迷った後、スマホを取り出し、QRコードを読み取った。

「ありがとうございます。また、連絡します」

彼女は、そう言って、子供をチャイルドシートに乗せ、チャリンコに跨った。

「はい、楽しみに待ってます！」

俺は、笑顔で彼女を見送った。

彼女が去った後、俺は、自分のスマホを確認した。彼女の名前は、「美咲」となっていた。

美咲…。綺麗な名前だ。

今日の成果は、上々だ。連絡先を交換できただけでも、大きな一歩だ。

俺は、チャリンコに跨り、団地の中を走り出した。

次のターゲットを探して。

数日後、美咲からメッセージが届いた。

「あの…先日は、ありがとうございました。ランチのお誘い、せっかくですが、今回は見送らせてください」

やはり、そう簡単にはいかないか。

しかし、俺は諦めなかった。

「そうですか。残念です。でも、いつでもお誘い待ってます。何か困ったことがあれば、いつでも連絡してください」

俺は、そう返信した。

その後も、俺は、美咲にメッセージを送り続けた。

他愛もない日常会話や、子育ての悩み相談。

少しずつ、美咲との距離は縮まっていった。

そして、ある日のこと。

美咲から、突然のメッセージが届いた。

「あの…もしよかったら、今度、少しだけお茶でもどうですか？」

ついに、チャンスが来た。

俺は、迷わず返信した。

「はい、ぜひ！」

数日後、俺と美咲は、団地の近くのカフェで会うことになった。

カフェで待っていると、美咲がやってきた。

白いワンピースに身を包み、少し緊張した面持ちだった。

「こんにちは」

「こんにちは。来てくれて、ありがとうございます」

俺は、席を立ち、彼女を迎えた。

「こちらこそ、ありがとうございます」

美咲は、テーブルに着き、メニューを開いた。

「何か、飲みますか？」

「あ、はい。アイスコーヒーで」

俺は、店員を呼び、アイスコーヒーを注文した。

コーヒーが運ばれてくると、美咲は、少し緊張した面持ちで口を開いた。

「あの…実は、相談したいことがあって」

「はい、なんでしょうか？」

「最近、夫との関係があまり良くなくて…」

きた。

まさに、チャンスだ。

俺は、慎重に言葉を選びながら、彼女の話を聞いた。

彼女は、夫の仕事の忙しさや、子育ての負担、そして、満たされない寂しさを語った。

俺は、優しく彼女に寄り添い、共感の言葉をかけた。

「それは、辛いですね。でも、あなたは、決して一人ではありません。いつでも、私を頼ってください」

俺は、そう言いながら、そっと彼女の手を握った。

彼女は、驚いたように俺の顔を見たが、抵抗することはなかった。

そのまま、俺たちは、しばらくの間、手を握り合った。

そして、別れ際。

俺は、彼女に囁いた。

「また、いつでも会えますよ」

彼女は、少し頬を赤らめながら、頷いた。

「…はい」

その日を境に、俺と美咲の関係は、大きく変わった。

それから数週間後、俺たちは、ついに一線を越えた。

団地の昼下がり。

俺と美咲は、互いの体を求め合い、激しく愛し合った。

そして、その日を境に、美咲は、俺の虜になった。

もちろん、美咲だけではない。

俺は、これからも、団地のママさんたちをターゲットに、愛を囁き続けるだろう。

なぜなら、そこには、満たされない欲求と、甘い誘惑が渦巻いているからだ。

そして、俺は、その中心で、欲望のままに生きることを決めたのだから。

団地のチャリンコ置き場は、今日もまた、新しいドラマの幕開けを待っている。