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## 街角の innocent

夕暮れの渋谷、スクランブル交差点は今日も喧騒に満ちていた。無数の人々がそれぞれの目的地を目指し、波のように押し寄せては引いていく。その人波の中に、一際目を引く女性がいた。白いワンピースに身を包み、長い髪を風になびかせている彼女は、まるで絵画から抜け出してきたかのように儚げで、周囲の喧騒とは隔絶された静謐さを漂わせていた。

彼女の名は、美咲。都内の大学に通う2年生だ。今日はサークルの仲間と映画を観る約束をしていたが、急な用事でキャンセルになってしまい、一人で帰路についていた。渋谷の街は、美咲にとって少し苦手な場所だった。どこを見ても人が多く、常に何かの音が聞こえてくる。その騒がしさに、どうも馴染めないのだ。

そんな彼女の前に、一人の男が立ち塞がった。黒いジャケットを羽織り、整った顔立ちをした、いかにも都会的な男だった。

「すみません、少しお時間よろしいですか？」

男は甘い声でそう言った。美咲は少し戸惑いながらも、足を止めた。

「あ、はい…」

「素敵なワンピースですね。とてもお似合いです」

男はそう言って、にこりと微笑んだ。美咲は褒められたことに慣れておらず、少し頬を赤らめた。

「ありがとうございます…」

「突然すみません。実は、モデルを探していまして。もしよかったら、少しお話を聞いていただけませんか？」

モデル、という言葉に、美咲は少し心が揺れた。小さい頃から、モデルという仕事に憧れがあったのだ。しかし、自分にはそんな才能はない、と諦めていた。

「私、ですか？でも、モデルなんてやったことないですし…」

「大丈夫です。未経験でも構いません。一度、事務所に来ていただければ、詳しくご説明します。もちろん、強制ではありません。少しでも興味があれば、お話だけでも聞いていただけませんか？」

男は丁寧にそう言った。美咲は少し迷ったが、彼の熱心な様子に押され、連絡先を交換することにした。

「ありがとうございます。一度、検討してみます」

「ありがとうございます！ご連絡、お待ちしています」

男はそう言って、爽やかな笑顔で去っていった。美咲は、少しドキドキしながら、その場を後にした。

その夜、美咲は家に帰ってからも、男のことを考えていた。モデル、という言葉が頭から離れない。もしかしたら、自分の人生が変わるかもしれない。そんな期待と不安が入り混じった感情が、美咲の心を揺さぶっていた。

数日後、美咲は男から連絡を受け、事務所を訪れることにした。事務所は、渋谷の中心部にある雑居ビルの5階にあった。薄暗い廊下を進むと、奥に小さなオフィスがあった。

オフィスに入ると、男が笑顔で迎えてくれた。

「よくいらっしゃいました。今日は、お時間いただきありがとうございます」

男は美咲をソファに案内し、温かいお茶を出してくれた。

「まずは、当事務所についてご説明しますね」

男は、事務所のパンフレットを広げ、説明を始めた。事務所は、主に若い女性向けのファッション雑誌や広告のモデルを抱えているという。未経験者でも、レッスンを受ければすぐに活躍できる、と男は強調した。

美咲は、男の説明を真剣に聞いていた。モデルという仕事に対する憧れが、再び湧き上がってきたのだ。

「どうですか？少しは興味を持っていただけましたか？」

男はそう言って、美咲の顔を覗き込んだ。

「はい、とても興味があります。でも、私にできるかどうか、不安です…」

「大丈夫です。美咲さんなら、必ずできます。それに、私が全力でサポートします」

男はそう言って、美咲の肩に手を添えた。美咲は、少しドキッとした。

「あの…」

「緊張しないでください。これは、よくあることです。モデルの世界では、信頼関係がとても大切なんです」

男はそう言って、さらに美咲に近づいた。美咲は、男の甘い香りに包まれ、頭がぼーっとしてきた。

「今日は、少し遅い時間になってしまいましたね。もしよかったら、この後、食事でも行きませんか？もっと、美咲さんのことを知りたいんです」

男は、甘い声でそう囁いた。美咲は、彼の視線に吸い込まれそうになった。

「えっと…」

美咲は、どう答えるべきか迷った。男の誘いに乗るべきか、それとも、断るべきか。しかし、男の熱心な様子に、押されてしまい、結局、頷いてしまった。

「…はい」

男は、満足そうに微笑んだ。そして、美咲の手を取り、事務所を出て行った。

その夜、美咲は、男と食事に行った。レストランは、夜景の見える高級な場所だった。美咲は、緊張しながらも、男との会話を楽しんだ。男は、巧みな話術で、美咲の警戒心を解いていった。

食事の後、男は美咲をホテルに誘った。美咲は、さすがに躊躇した。

「あの…今日は、もう遅いですし…」

「大丈夫です。何も強要しません。ただ、少しだけ、お話しませんか？」

男は、甘い声でそう言った。美咲は、男の視線に抗えず、結局、彼の誘いに乗ってしまった。

ホテルの部屋に入ると、男は美咲を抱きしめた。美咲は、体が震えた。

「あの…」

「大丈夫です。安心してください。私は、美咲さんのことを大切にします」

男はそう言って、美咲の服を脱がせ始めた。美咲は、抵抗することもできず、ただ、男のなすがままになっていた。

そして、その夜、美咲は、初めて男と体を重ねた。

翌朝、美咲は、後悔の念に苛まれていた。自分は、なんてことをしてしまったんだ。モデルになりたい、という甘い誘いに乗り、自分の体を売ってしまった。

美咲は、涙を流しながら、ホテルを後にした。

それから数日後、美咲は、男からの連絡を無視し続けた。モデルの仕事も、すっかり諦めてしまった。

しかし、心の傷は、なかなか癒えなかった。美咲は、自分の軽率な行動を、一生後悔し続けるだろう。

この出来事は、美咲にとって、苦い教訓となった。世の中には、甘い言葉で近づいてくる危険な人がいる。自分の身は、自分で守らなければならない。

美咲は、この経験を糧に、強く生きていくことを決意した。そして、いつか、この街で、自分の夢を叶えたいと願った。しかし、そのためには、もっと強く、賢くならなければならない。美咲は、そう心に誓った。