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## 陽だまりの自転車置き場

初夏の陽射しが、団地の自転車置き場に暖かな光を落としていた。アスファルトの照り返しと、汗ばんだ肌にまとわりつく空気が、なんとも言えない季節感を醸し出している。ここは、子育て世代の若き母親たちが多く暮らす団地の一角。そして、この陽だまりは、彼女たちにとって、束の間の休息や、時に密かな情熱を燃やす場所となっていた。

「今日も暑いな…」

中年男、佐川は、愛用のママチャリに跨りながら、ため息をついた。彼は、この団地で「ナンパ師」としてひっそりと、しかし確実な成果を上げていた。彼のターゲットは、団地に住む、少しばかり物足りなさを抱えた、若い奥さんたちだ。専業主婦だったり、時短勤務だったり、毎日家庭と育児に追われる彼女たちの、ほんの一瞬の隙間を狙う。

今日の佐川の狙いは、特定されないように、いくつかの「顔」を使い分けることだった。あるいは、今日はあまり調子が乗らないから、軽く流そうか、とも考えていた。しかし、チャリンコ置き場に足を踏み入れた瞬間、彼の目は釘付けになった。

そこにいたのは、鮮やかな水色のワンピースを着た、小柄な女性だった。自転車のサドルに腰掛け、汗を拭う仕草は、まるで絵に描いたようだった。日差しに透ける鎖骨、細く伸びた腕。佐川の胸に、熱いものが込み上げてくる。

「こんにちは。暑いですね。」

佐川は、営業スマイルをたたえながら声をかけた。女性は、少し驚いたように佐川の方を見た。大きな瞳は、少し潤んでいるように見えた。

「あら、こんにちは。本当に暑いですね。」

その声は、予想以上に可愛らしかった。佐川はさらに心臓が高鳴るのを感じた。

「こんな暑いのに、お買い物ですか？お疲れ様です。」

「いえ、子どもが保育園で、少し買い物に来ただけです。主人は今日もお休みで。」

「そうなんですね。お子さんは、いくつなんですか？」

会話は、ごく自然に進んでいった。佐川は、相手の反応を見ながら、巧みに距離を詰めていく。彼女の名前は、由紀。3歳になる息子がいるという。夫は、少しだけ家にいることが多いらしい。佐川は、その「少しだけ」に、かすかな希望を見出した。

「息子さん、可愛いんでしょうね。うちの子なんて、もう中学生で、全然相手にしてくれなくて。」佐川は、架空の子供の話を持ち出した。「たまには、甘えん坊の可愛い盛りのお子さんを見るのが、羨ましいんですよ。」

由紀は、佐川の言葉に、少し目を細めた。彼女もまた、子供の成長と共に、自分自身の時間や、誰かとの触れ合いを求めているのかもしれない。

「そうなんですね。息子は、最近ますます手がかかってきて…でも、可愛いんですけどね。」

佐川は、さらに核心に迫った。「それにしても、由紀さん、本当に素敵ですね。団地の中にいるなんて、もったいないくらい。」

由紀は、佐川の褒め言葉に、頬をわずかに赤らめた。彼女は、普段、家庭という閉じた空間にいることが多いのだろう。こうして、自分以外の視線に晒され、褒められることは、彼女にとって、ひょっとしたら新鮮な体験なのかもしれない。

「そんなことないですよ。」

「いやいや、本当に。もしよかったら、今度、ゆっくりお話でもしませんか？この暑さで、ちょっと喉が渇いちゃって。近くに良いカフェがあるんですけど。」

佐川は、ストレートな誘いをかけた。由紀は、少し躊躇しているように見えたが、佐川の真っ直ぐな目に、抗えなかったのかもしれない。

「え…でも、息子が…」

「大丈夫ですよ。私は、すぐ近くに住んでるんで、万が一の時は、すぐに駆けつけられますから。それに、ほんの少しの時間だけですし。私も、由紀さんみたいな素敵な奥さんとお話できるなら、嬉しいんですよ。」

佐川は、罪悪感を感じないように、自分自身に言い聞かせるように言葉を紡いだ。彼は、あくまで「楽しい時間」を提供する存在なのだと。

結局、由紀は佐川の誘いに乗った。自転車を駐輪場にしっかりと止め、佐川と共に、団地の敷地内にある古びたカフェへと向かった。カフェの中は、涼しい風が吹き抜けていた。

そこで交わされた会話は、実に刺激的なものだった。由紀は、夫との関係や、日々の生活への不満を、ぽつりぽつりと語った。佐川は、それを静かに、そして時に共感するように聞き、彼女の心を開かせた。そして、佐川は、自分の欲望を隠すことなく、しかし紳士的に、由紀に近づいていった。

「由紀さん、本当に綺麗ですね。そのワンピース、すごく似合ってますよ。ドキドキします。」

佐川の言葉に、由紀の顔がさらに赤くなる。彼女は、これまで誰にも言えなかった自分の秘めたる欲望を、佐川に打ち明けた。日常に埋もれていく自分への焦り、夫への不満、そして、もっと誰かに求められたいという切実な思い。佐川は、そんな彼女の言葉を、貪欲に吸収していった。

陽だまりの自転車置き場は、彼女たちにとって、単なる自転車を停める場所ではなかった。それは、日常の閉鎖的な世界から、一時的に解放されるゲートであり、新たな刺激や欲望が芽生える、秘密の庭だった。佐川は、そんな庭を訪れる度に、新しい「花」を見つけ、そして、その「花」を摘む喜びを知っていた。

この日もまた、佐川は満足げに、自転車置き場を後にした。彼の胸には、次に狙う「奥さん」の顔が、すでにいくつか浮かんでいた。誰もが皆、それぞれの事情を抱え、それぞれの欲求を秘めている。そして、佐川は、その隠された欲望に、巧みに触れる天才だった。彼の人生は、まさにこの団地の自転車置き場から始まる、終わりのない「狩り」に彩られていたのだ。

（この後、佐川は他の女性との出会いを繰り返し、それぞれの「ママチャリ団地妻」との濃密な時間を描いていく。例えば、胸の大きな、少しずぼらな性格の奥さんや、フェロモンを撒き散らすような、小悪魔的な魅力を持った奥さん、あるいは、見た目は清楚で控えめだが、内には激しい欲望を秘めた奥さんなど、様々なタイプの女性が登場し、彼女たちの「乱れに乱れる」様子が詳細に描かれる。）