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## 公民館の片隅で

夕暮れ時、公民館の廊下は、どこか懐かしい匂いがした。長年使い込まれた畳の匂い、微かに漂う埃の匂い、そして、かすかに香るお茶の匂い。そんな公民館の一室で、「ビデオサークル・レトロ」の活動は行われていた。

サークルのメンバーは、地域に根差した、どこか古風な中年男性たちが中心だった。最新のデジタル機器には疎いが、フィルムカメラや8ミリビデオに魅せられ、今もなおアナログの世界を愛していた。その中でも、ひときわ目立つ存在が、村田さんだった。

村田さんは、丸みを帯びた体型に、丸眼鏡、そして何よりも、その温厚な人柄で、サークル内でも慕われる存在だった。しかし、彼の胸には、誰にも言えない秘密があった。それは、最近サークルに入ってきた、新しいメンバー、佐伯さんへの、抑えきれない想いだった。

佐伯さんは、村田さんとは対照的な、若々しく、そして何よりも、その美しさで、サークルの雰囲気を一変させた。ふわりとした栗色の髪、透き通るような白い肌、そして、何よりも、その豊かな胸元は、村田さんの目を釘付けにした。

「佐伯さん、このカメラの使い方、ちょっと難しいですよね。」

村田さんは、ぎこちなく話しかけた。佐伯さんは、笑顔で応えた。

「ええ、村田さん。でも、とっても興味があるんです。昔のビデオって、なんだか温かみがあって。」

佐伯さんは、ビデオ撮影の経験は全くなかった。しかし、その熱心さと、何よりも、その純粋な瞳は、村田さんの心をくすぐった。村田さんは、佐伯さんにビデオ撮影の基礎を教えることを申し出た。

「佐伯さん、せっかくですから、私が直接、手取り足取り教えましょう。」

村田さんの顔は、かすかに赤らんでいた。佐伯さんは、少し戸惑った表情を見せたが、すぐに笑顔で頷いた。

「ありがとうございます、村田さん。助かります。」

それから、村田さんと佐伯さんの「個人レッスン」が始まった。公民館の活動日以外にも、村田さんの自宅に佐伯さんが訪れるようになった。村田さんの自宅は、古いながらも、整然と片付けられており、佐伯さんは、その落ち着いた雰囲気に安心感を覚えた。

村田さんは、佐伯さんにビデオカメラの操作方法、撮影の構図、そして、編集の基本を丁寧に教えた。佐伯さんは、驚くほどの吸収力で、みるみるうちにスキルを上げていった。

「佐伯さん、素晴らしいですね！才能がありますよ！」

村田さんは、佐伯さんの成長を心から喜び、褒め称えた。佐伯さんは、村田さんの温かい言葉に、さらにやる気を燃やした。

「村田さんのおかげです。本当に感謝しています。」

佐伯さんの笑顔は、村田さんの心をさらに掻き乱した。村田さんは、佐伯さんに、ビデオ撮影の楽しさだけでなく、人生の素晴らしさ、そして、自分自身の魅力についても語りかけた。佐伯さんは、村田さんの話に真剣に耳を傾け、時に質問を投げかけた。

「村田さんって、本当に色々なことを知ってるんですね。」

佐伯さんの言葉は、村田さんの自信をさらに高めた。村田さんは、佐伯さんの純粋さと、その魅力に、ますます惹かれていった。そして、ある日、村田さんは、意を決して、佐伯さんに告白した。

「佐伯さん…あの…私、佐伯さんのことが…好きです。」

村田さんの声は、震えていた。佐伯さんは、村田さんの突然の告白に、目を丸くした。

「村田さん…。」

佐伯さんは、しばらく言葉を失った。村田さんの顔は、さらに赤くなり、汗が額に滲んでいた。

「佐伯さん、お断りされるなら、それでも構いません。ただ、この気持ちを伝えたくて…。」

村田さんは、俯いた。佐伯さんは、静かに村田さんの顔を見つめた。

「村田さん…。」

佐伯さんは、かすかに微笑んだ。

「私も…村田さんのこと、好きですよ。」

村田さんの顔が、ぱあっと明るくなった。二人の間には、温かい空気が流れた。

その日以来、二人の関係は、急速に深まっていった。公民館でのビデオサークルの活動は、二人にとって、特別な時間となった。村田さんは、佐伯さんの撮影した映像を、愛情深くチェックし、アドバイスを与えた。佐伯さんも、村田さんの教えを真摯に受け止め、さらに腕を磨いていった。

しかし、二人の関係には、まだ「奥さん」という存在が、影を落としていた。佐伯さんは、結婚しており、夫は単身赴任で、遠方に住んでいた。村田さんは、そのことを知っていたが、佐伯さんの魅力に抗うことができなかった。

ある日、佐伯さんが、村田さんの自宅を訪れた。雨が強く降る日だった。

「村田さん、ごめんね。急に。」

佐伯さんは、少し疲れた顔をしていた。

「どうしたんですか、佐伯さん？」

村田さんは、心配そうに尋ねた。

「夫が、急に帰ってくることになったの。それで…ちょっと、気が動転してしまって。」

佐伯さんの声は、かすかに震えていた。村田さんは、胸が締め付けられるような思いがした。

「そうですか…。」

村田さんは、何も言えなかった。佐伯さんは、村田さんの隣に座り、静かに涙を流した。

「私、どうしたらいいか分からないの。村田さんのこと、大切だって思ってる。でも、夫のことも…」

佐伯さんの言葉は、村田さんの心に深く突き刺さった。村田さんは、佐伯さんの肩に手を置いた。

「佐伯さん、無理しないでください。あなたの気持ちを、一番大切にしてください。」

村田さんは、佐伯さんを慰めた。しかし、彼の心の中では、抑えきれない欲望が渦巻いていた。佐伯さんの、憂いを帯びた表情、そして、その豊かな胸元が、彼の視線を釘付けにした。

「佐伯さん…。」

村田さんは、佐伯さんの顔を覗き込んだ。佐伯さんは、村田さんの熱い視線に、戸惑いながらも、何かを感じていた。

「村田さん…。」

佐伯さんは、かすかに村田さんの胸に寄りかかった。村田さんは、その温もりを全身で感じた。そして、彼は、もう自分を抑えることができなかった。

「佐伯さん…。」

村田さんの声は、かすかに震えていた。佐伯さんは、静かに目を閉じた。

その夜、二人の間には、言葉にできない愛情と、そして、禁断の情熱が燃え上がった。村田さんは、佐伯さんの身体を、慈しむように抱きしめた。佐伯さんも、村田さんの温かさに、身を委ねた。

「パパ…ごめんね…。」

佐伯さんのつぶやきは、村田さんの耳に届いた。しかし、村田さんは、もう止まることができなかった。熟した果実のように、甘く、そして、みずみずしい佐伯さんの身体が、彼の欲望を掻き立てた。

「大丈夫だよ、佐伯さん。大丈夫。」

村田さんは、佐伯さんの髪を優しく撫でた。そして、二人は、互いの身体を求め合った。

その夜の出来事は、二人の心に、深い爪痕を残した。佐伯さんは、罪悪感に苛まれた。しかし、村田さんへの想いは、ますます強くなっていった。村田さんも、佐伯さんへの愛情と、そして、その関係の複雑さに、苦悩した。

しかし、二人の関係は、その夜を境に、さらに深まっていった。公民館でのビデオサークルの活動は、二人にとって、密やかな逢瀬の場となった。村田さんは、佐伯さんに、ビデオ撮影の技術だけでなく、人生の喜びや、愛の深さを教えた。佐伯さんも、村田さんの愛情に包まれ、ますます輝きを増していった。

ある日、佐伯さんが、村田さんに、衝撃的な告白をした。

「村田さん、私、妊娠したみたい。」

村田さんの顔から、血の気が引いた。佐伯さんは、不安そうに村田さんの顔を見つめた。

「え…。」

村田さんは、声も出なかった。佐伯さんは、静かに涙を流した。

「ごめんね、村田さん。私、どうしたらいいか分からない。」

村田さんは、佐伯さんの肩を抱きしめた。彼の心には、複雑な感情が渦巻いていた。喜び、不安、そして、佐伯さんへの深い愛情。

「佐伯さん、大丈夫だよ。私が、必ず、守る。」

村田さんの言葉は、佐伯さんの心に、温かい光を灯した。二人の未来は、まだ見えない。しかし、二人の間には、確かな愛があった。公民館の片隅で生まれた、この禁断の愛は、これから、どのような結末を迎えるのだろうか。それは、まだ誰にも分からない。