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## 歪んだ鏡

静寂に包まれた寝室。夫、翔太は出張から戻ったばかりで、深い眠りに落ちていた。その横で、私は眠れないでいた。今日、夫の上司である五十嵐からの、露骨な視線と、背筋を凍らせるような圧力を感じていたからだ。

昼下がりの社内、打ち合わせを終え帰ろうとした私に、五十嵐は声をかけた。彼の言葉は、仕事に関するものではなかった。個人的な飲み会に誘われ、断り切れずに高級レストランへと足を運んだ。洗練された空間、そして、彼からの執拗な視線。ワインを飲む度に、私の肌は熱を帯びていった。

「君、きれいだな…」

彼の言葉は、低く、艶っぽかった。まるで獲物を狙う蛇のようだった。私はグラスを握り締め、震える手を隠した。

「ダメです。主人がいるんですから」

必死に抵抗しようとしたが、彼の言葉はまるで私の心の防壁を容易く打ち破るかのようだった。そして、突然のキス。彼の唇は、強引で、執拗だった。私は抵抗するも、彼の力に抗うことは出来なかった。体中を電気が走るような感覚に襲われ、私の理性は崩壊寸前だった。

その後、タクシーに乗り込むと、抑えきれない焦燥感に襲われた。エレベーターの中で、私は自分の体を制御できなくなっていた。股間から温かいものが流れ出す。恥ずかしさと、抑えきれない恐怖と、そして、妙な快感。全てが混ざり合って、私は涙を流した。

翌日、電気屋に頼んでいた蛍光灯の交換に来ていた田中さん。若い彼は、私の動揺に気づいたのか、何も言わずに作業を終えようとした。しかし、私の緊張感から放たれた、何かを感じ取ったのか、作業を終えた後、私の横を通り過ぎる際に、一瞬だけ、私の股間を触れた。

その感触に、私は身体中の力が抜けるのを感じた。ご無沙汰の快感に、私は本能のままに身を任せかけた。だが、直ちに理性を取り戻し、彼を遮った。

その夜、翔太は出張の疲れから、すぐに眠りについた。私は、その横で、五十嵐の唇の感触、そして田中さんの手の感触を思い出していた。身体は、まだ熱を帯びていた。

一週間後、夫の父、つまり私の義父の初七日法要。格式高い会場には、親族が集まっていた。義父は、生前、私に対して厳しく、距離を置いていた。しかし、その晩、酔った義父は私に向かって歩み寄ってきた。

「おーい、○○（私の名前）…」

彼の口調は、普段とは全く違っていた。そして、私の身体に抱きついてきた。私は必死に抵抗するも、彼の力は私の抵抗を容易くねじ伏せた。彼の肉体は、年老いた男性のものではなく、若い男のように力強く、私を支配しようとしていた。

私は、抵抗しながらも、彼の肉棒の硬さを感じた。嫌悪感と、恐怖、そして、抑えきれない焦燥感。全てが混ざり合って、私の意識は朦朧としていった。

それから数ヶ月後、高校時代の恩師である、木村先生に再会した。木村先生は、老練で、落ち着いた雰囲気を持つ男性だった。彼は、私をヨガ教室に誘ってくれた。

柔らかな照明の教室で、木村先生は私を優しく指導してくれた。彼の触れ方は、五十嵐や義父とは全く違っていた。老練な技と、深い愛情に満ちた、優しく確かなものだった。

彼の愛撫に、私は抵抗するどころか、全身で受け入れた。経験の少ない私は、彼の指導のもと、ヨガのポーズを取りながら、今まで感じたことのないような快感に溺れていった。

この出来事の後、私は、自分がどれだけ歪んだ状況の中にいたのかを自覚し始めた。夫への愛情、そして、それとは別に芽生えてしまった欲望。全てが混ざり合って、私自身の心が分からなくなっていた。鏡に映る自分の顔は、歪んで見えた。そして、私は、この歪んだ鏡の中で、自分自身と向き合わなければならないことに気づいた。


この歪んだ現実から抜け出すには、どうすればいいのか。私はまだ答えを見つけられていない。ただ、一つだけ確かなことは、私はこの経験から、何かを学び、そして、変わらなければならないということだ。私の未来は、まだ、霧に包まれている。しかし、私は、その霧を少しずつ払い除けて、自分自身を見つめ直していく覚悟を決めた。そして、自分自身の心を、再び美しく、そして、強くしていくことを誓った。